視聴者の「NHK紅白」離れが好影響も…TBS「WBC特番」が業界で注目を集める理由

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

Advertisement

大みそかの視聴率バトルはどの局が制するか

 大みそかのゴールデン・プライム帯(GP帯、午後7~11時)で「第74回NHK紅白歌合戦」(午後7時20分から11時40分)と裏かぶりする民放各局の番組が出そろった。

 日本テレビ 「笑って年越し!THE 笑(ワラ)晦日」
 テレビ朝日 「ザワつく!大晦日」
 TBS 「WBC2023 大晦日・生放送スペシャル」
 フジテレビ 「逃走中~お台場リベンジャーズ~」
 テレビ東京 「第56回年忘れにっぽんの歌」、「孤独のグルメ2023 大晦日スペシャル(仮)」、「東急ジルベスターコンサート2023-2024」

 昨年大みそかは、全局の中で紅白第1部が31.2%(午後7時20分~8時55分、ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)、第2部(午後9時~11時45分)が35.3%で、ぶっちぎりのトップだった。民放キー局では、「ザワつく!大晦日 一茂良純ちさ子の会」の第1部(午後6時~8時)が11.2%、第2部(午後8時~11時)が10.0%で唯一2ケタ超えを果たし、民放でのトップだった。

「『ザワつく!』の視聴率は、レギュラー放送時と同じぐらい。普段の視聴者がそのまま視聴したと思われ、今年も同じぐらいの数字を取りそうです。紅白は、昨年の第2部が史上ワースト2位を記録していますが、旧ジャニーズタレント出場がゼロということもあり、ワースト更新は避けられないと思います。ここで面白いのは、選挙の“浮動票”のように、紅白を見ない視聴者がどの局を見るか、です。それが民放キー局の視聴率ダービーの勝敗を分けることになりそうなので」(放送担当記者)

 その、意外な伏兵として、関係者が注目しているのがTBSだという。

 TBSが満を持して制作するのは、今年3月に3大会、14年ぶりの世界一を獲得して日本中を熱狂させた、野球世界一決定戦・WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の特番で、午後6時から、6時間にわたって放送する。

 WBC侍ジャパン公認サポートキャプテンを務め、現地でも取材を行ったタレントの中居正広(51)がMCを務め、TBSの中継で放送されなかった貴重な初出し映像も放映する。スタジオには侍ジャパンの選手を招き、今だから語れるエピソードや試合の裏側を掘り下げる。

「宮崎キャンプで積極的に若手選手たちと交流を行ったダルビッシュ有が抱いていた、ある想いとは何か。また、WBC初戦の中国戦、先発で夢の舞台に初めて立つ大谷翔平投手が、甲斐拓也捕手と試合前のブルペンで繰り広げた緊張感漂う作戦会議の様子などが、初出し映像として放映されるそうです」(TBS関係者)

 さらに、06年と09年のWBCを連覇した侍ジャパンをけん引した、米マリナーズで会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏(50)がインタビュー出演。カメラの前で初めて今大会について語り、自身が考える野球とその魅力、現在の日本代表に受け継がれたものなどを紐解くという。

 しかし、いくら日本中を熱狂の渦に巻き込んだといっても、9カ月も経っているだけに、当初、この特番の放送決定に対してネット上では以下のような声が。

《さすがにWBCはもうお腹いっぱいだし、約6時間もやる必要もあるかと思う》
《3月からずっとやってきて、まだやるの?ってのが感想》
《今更感が強い》
《わざわざ大晦日に見なくてもいい》

 すでに視聴者も食傷気味であることをうかがわせ、番組もうまくいかないのではないかと連想させたのだが、その一方で、

《あの感動をもう一度味わいながら、良い年越しを過ごせそう》
《良い忘年会&年越しになりそう!》
《年末テレビ見るものないなぁ~って思ってだけど見る番組が出来た》
《なんだかんだで民放1位の視聴率になるだろうね》

 11月29日に定例会見を開いたTBSの佐々木卓社長は、

「私どもが中継した日韓戦は6200万人がご覧になった驚異的な番組であり、数字だった。国民的に注目を集めたものを大みそかにもう一度やって、楽しんでもらいたい」

 と、熱く語っていた。

「2003年の大みそかにTBSが『K-1』、日テレが『猪木祭』、フジが『PRIDE』を放送し、格闘技人気が頂点を迎えました。しかしブームは続かず、その後、全局が格闘技中継から撤退しました。この格闘技特番には、スポーツ好きな視聴者が食い付いていたんです。ところが、格闘技中継の撤退で、大みそかは音楽かバラエティーの二択を迫られることになってしまいました。そのうち、若い視聴者を中心にテレビ離れが加速し、視聴率が“地盤沈下”してしまったのです」(スポーツ紙記者)

 それでもTBSは、世界4階級制覇王者である井岡一翔(34)の世界戦を中心に、昨年まで12年連続で、大みそかのボクシング中継を継続してきている。

「今年を象徴する出来事を振り返った時、スポーツ、特に野球好きが思い浮かべるのは、何といってもWBCでしょう。関西ローカルの局ならば、38年ぶりに日本一に輝いた阪神タイガースの特番で高視聴率が獲得できるかもしれませんが、さすがに全国放送だとWBCしかないと、制作サイドは考えたようです。CM枠は、名だたる企業で埋め尽くされそうです。その割に、制作費は中居さんとゲストのギャラぐらいですから、これで高視聴率が獲得できたら儲けものです」(同)

次ページ:TBSに吹く追い風

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。