コロナ禍で激増の「無人販売店」が“コンセプト崩壊” 有人化、脱専門店化…何が起きているのか

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故意かどうか判断するのは難しい

 先の「おウチdeお肉」は、万引き犯をテレビのワイドショーやSNSで徹底的に“晒す”ことでも話題になったが、当然、無人販売には万引きのリスクが伴う。「ナイゾー」の店内には3台の防犯カメラが設置されているが、万引きや会計ごまかしを判断するのは難しいという。

「商品にバーコードがついておらず、お客さんは冷凍庫から欲しい商品を取って、タッチパネルでその商品を選び決済するシステムです。商品を選ぶときに押し間違えたり、複数買うのに1つ分しかお金を払わなかったり、いくらでもごまかしようがあるし、機械に不慣れで起きたミスなのか故意なのか判断がしづらいんです。商品1つ1つにバーコードを付けていないのは、業務簡略化のためなので、会計をごまかすお客さんだけを責めきれない部分があります。ただ、何度も来店されるのに、その度未払い商品がある方もいて、確認する度に残念な気持ちが募りました」

 過去には、明らかに万引きと分かる事例もあった。

「一度、監視カメラを見ていたら、6000円くらいするしゃぶしゃぶ用の神戸牛の肉を手に取ってそのまま店の外に出て行かれたことがありました。翌日、警察に届け出て、防犯カメラのデータを提出しましたが、万引き犯は捕まっていません。もし捕まったとしても、大抵は不起訴になるし、労力に見合わないと思って、その後は警察に届けるのもやめました」

 最近では、高額の商品の販売数を絞り、1パック税抜き650円のホルモンなど低価格の商品を中心にする対策を取ったという。

「万引きや会計ごまかしの被害は、月に5、6件、金額にして2、3万円ほどです。売上から考えると、被害額は微々たるもの。むしろわざわざ防犯カメラを確認して『また盗まれたのか』と思う方が精神的に辛い。その上、SNSなどで、『無人販売店が犯罪を誘発している』『警察に通報して捜査してもらうのは税金の無駄遣い』といった意見が届くこともあって、それもしんどかったです。一度、お店がテレビに取り上げられたときは『どんな万引き対策をしているんだ』とわざわざ店に電話を掛けてくる方もいました」

岐路に立つ無人販売所ビジネス

 消費経済アナリストの渡辺広明氏は、無人販売所をめぐる変化を次のように見ている。

「例えばコンビニエンスストアの場合、光熱費、人件費、廃棄費用の3つが最も大きいコストになります。無人販売所ならば人件費がかかりませんし、冷凍品ですので廃棄ロスもない。そうした利点で、空きテナントに進出し、店舗数を伸ばしてきました。さらに問屋とのやりとりなど仕入れや発注の手間を省くため、単一商品でのビジネスを行っていたと推察できますが、消費者はその商品に飽きて来ているように思います。そもそも市販の冷凍食品のクオリティが上がってきた今、他と差別化できるほどの美味しさを冷凍で提供することは難しいのでしょう」

 最初は物珍しさで足を運んだとしても、無人販売所で「リピート買い」をする人は、そう多くないはず……と渡辺氏は指摘。だからといって、日用品など他のジャンルへ手を広げるのは“悪手”だという。

「3000点の品を扱い毎週100点が入れ替わるコンビニの品揃えには、さすがに無人販売所の規模では敵わない。飽きられたモノに変わるインパクトのある商品を打ち出す、または継続的に毎日買いたくなるようなモノを売らないと、ビジネスとして成立しないと思います。後者の方向では、すでに“自動販売機”という無人販売が確立されているわけですが……。いずれにせよ、一過性のブームに終わるのか、無人販売所ビジネスはいま岐路に立たされているといえるでしょう」

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