おでんの主役「魚の練り物」が“消費量”激減から復活の兆し…「筋トレの相棒」という新たな魅力

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新基準では“鶏むね肉”を圧倒

 もちろん、おでんダネの練り物を食べれば、直ちに筋力アップ、筋肉ムキムキになるわけではない。練り物には、人が体内で作りだすことができない9種類の必須アミノ酸が、バランスよく含まれているものの、既存の評価基準である「アミノ酸スコア」では、魚肉のほか、豚肉(ロース)や鶏卵、牛乳、大豆なども同じ100%の満点評価。

 他の食材に比べて特別自慢できる材料にはならなかったのだが、国連食糧農業機関(FAO)が提唱する良質なタンパク質を測定できる新たな評価基準「DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)」による検査で、遂に魚肉の優位性が明らかになった。

 DIAASでは100%以上の評価も可能なため、鈴廣かまぼこは山口県予防保健協会食品環境検査センターの協力で栄養成分を評価。すると、かまぼこの他、魚肉ペプチド、魚のすり身が1.26~1.28で、乳タンパク質や全乳、ホエイタンパク質、鶏むね肉(1.18~1.08)を上回る結果が得られ、「魚肉タンパクは他の食品よりも、消化・吸収性に優れ、良質なタンパク資源であることが証明できた」と同社。検査結果には若干ばらつきもあることから、精度を高めるために今後も検査を継続するという。

 おでんダネのほか、かまぼこや伊達巻きも魚肉が原料となっているが、こちらもおせち料理の消費が減って需要が落ち込んでいる。従って新たなDIAASの評価は、魚の練り物消費の巻き返しへ向け、好材料となろう。

 今年も暖冬が予想されているが、DIAASの新評価を目にすれば、適度な運動とともに、高タンパク・低脂肪で消化・吸収性に富んだ温かい練り物のおでんが、無性に食べたくなるのではないか。

川本大吾(かわもと・だいご)
時事通信社水産部長。1967年、東京生まれ。専修大学を卒業後、91年に時事通信社に入社。長年にわたって、水産部で旧築地市場、豊洲市場の取引を取材し続けている。著書に『ルポ ザ・築地』(時事通信社)。

デイリー新潮編集部

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