おでんの主役「魚の練り物」が“消費量”激減から復活の兆し…「筋トレの相棒」という新たな魅力

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おでん自体は“国民食”だけれど

 各地で40度に迫る厳しい暑さが続いた今夏。猛暑・真夏日などの連続記録を更新しつつ、ようやく秋が到来した。数年前まで、この時季のコンビニのレジ付近には「お好みでどうぞ」と大・小のカップが置かれ、四角い銀色の鍋では何種類ものおでんダネが出汁に浸かっていた。

 ところが最近、店員の負担軽減や悪質な客のマナー違反などの影響で、おでん鍋が撤去され、鍋の上に1人前のおでんパックが申し訳なさそうに置かれるようになって、寂しく感じられる。温暖化に加え、そうしたコンビニの事情も反映してか、おでんの主役とも言える魚の“練り物”の生産・消費量がどんどん落ち込んでいるのだ。【川本大吾/時事通信社水産部長】

 農林水産省が9月に公表した水産加工品統計調査によれば、魚の練り製品の生産量は、2022年が約47万1000トン。1975年には約115万5000トンだったため、この50年間で6割も急減したことになる。練り物が減少の一途を辿ることで、小規模業者を中心に、練り製品を作る加工業者も減り続けている。生産量減少の背景には、原料となるすり身の価格高騰などもあるにせよ、最大の要因はやはり“消費減”。日本人が練り物を食べなくなっていることだ。

 鍋料理の中で、おでんは比較的ポピュラーな存在。紀文食品(東京)がこのほどまとめた「紀文・主要7地域 家庭の鍋料理調査2023」の結果をみると、「好きな鍋料理」ランキングでは、すき焼き、しゃぶしゃぶに次いで3位だが、「昨年の秋・冬に食べた鍋料理」への回答では、すき焼き、キムチ鍋を抑えて1位となっており、人気は健在。今も国民食であることが分かる。

 同社によると、おでんのルーツは室町時代と古く、「豆腐田楽」に端を発すると言われている。その後、江戸時代には広く庶民に親しまれ、次第に煮込み風のおでんへと進化したようだ。地域ごとに、海鮮塩味の青森風や、黒はんぺんが有名な静岡風、味噌などで煮込んだ名古屋風など、各地自慢の味付け・タネで愛される料理のひとつとなっている。

おでんの人気タネで“過半数割れ”

 ただ、この調査結果の続きを見て、必ずしも「おでん=魚の練り物」ではないことに気付いた。「おでんによく入れるタネ」(表参照)をみると、1位がちくわ、2位はダイコン、3位・玉子、4位・さつま揚げ(天ぷら・つけ揚げ)、5位・こんにゃくなどと続き、ベスト10のうち意外にも半分以上が魚と無縁。魚の練り物を使っているタネは、ちくわ、さつま揚げ、はんぺん、ごぼう巻きの4種に過ぎず、6種がそれ以外のタネとなっている。

 特に、2位のダイコンと3位の玉子は、人気が高く、首位のちくわ同様に代表的なおでんダネと言える。従って、おでんの消費の動向が、必ずしも魚の練り物の需要と連動しているとは言えないのではないか、と感じた。

 ところが、おでんを食べるシーンを思い浮かべたら、やはり魚の練り物と関わりが深いことが分かる。なぜなら、おでんはたった2種のタネを食べて終わることはない。数種類を皿に取るわけで、ダイコン、玉子を食べたとしても、その後にはきっと、ちくわやさつま揚げ、はんぺんなど、いずれかの練り物も食べるであろう。従って、ダイコン、玉子の人気を妬む必要はないのだ。

 もっとおでんを食べてもらおうと、紀文食品は10年ほど前から各地で食べられている「ご当地風おでん」を順次販売し、「それぞれの家庭で作るのとは違った、さまざまな味付けやタネで手軽におでんを味わってもらいたい」と同社の広報。さらに、おでんダネには魚介の食感が楽しめる「いかキャベツ天」、「たこちくわ」「ほたて貝柱ちくわ」などを販売し、需要を喚起している。

 一方、鈴廣かまぼこ(神奈川県小田原市)は近年、1人前で楽しむ少し変わった味付けの「個食おでん」を提案。18種類のスパイスを使った「カレーおでん」や、柚子味噌で食べるおでんなど、いずれも具材にもこだわったメニューを期間限定で販売し、イベント期間、多くの来店者で賑わったという。

 このほか同社は、魚の練り物の健康機能についても積極的にPRしている。もともと魚肉は、高タンパク・低脂肪で知られているが、近年は筋肉保持に役立つアミノ酸が豊富に含まれていることも注目され始めた。

 そこで同社はプロサッカー選手とのコラボで、カラフルかつスタイリッシュな「フィッシュプロテインバー」を販売して人気に。さらに大手水産会社は、魚肉を使用した商品を「速筋タンパク」として、タレントの「なかやまきんに君」をPRに起用し、話題となっている。

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