一人勝ち「ポケトーク」は今やタクシー運転手の必需品 開発会社が語る“無料版ネット翻訳”との違い

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 読売新聞の大阪本社版は7月3日朝刊に「自動翻訳機 学習サポート 府内公立校 活用広がる 外国籍の子ども増加」という記事を掲載した。ポケトーク社のAI通訳機「ポケトーク」が、大阪府の大東市、守口市、八尾市などの公立学校で活用されていると伝えたのだ。

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 記事によると、各市の小中学校では、中国やベトナムなどから来日したばかりで日本語が苦手な外国籍の児童や生徒が増加しているという。

 学校側は「日本の高校に進学できる日本語力を身につけてもらう」ことを目標に、「日本語教室」の実施など様々な取り組みを行っている。

 そうした取り組みの中の一つに、ポケトークの配備がある。市教育委員会が購入して必要な学校に貸し出し、教師と児童・生徒とのコミュニケーションに活用されている。

 ポケトークといえば、明石家さんまのCMを思い浮かべる方も多いだろう。「海外旅行に行く人が購入する」というイメージも根強いかもしれない。

 だが、実際には教育現場でも活用されているというわけだ。そして最近、ポケトークの売上げが伸びているとの情報が広がっている。担当記者が言う。

「X(旧Twitter)で検索しても、『ポケトーク売れてる?』とか『ポケトーク売れてるらしい』という投稿が表示されます。背景としては、コロナ禍が一段落し、外国人観光客が復活していることが大きいようです。例えば、タクシーの運転手さんは、日本人が乗車した際に『ポケトーク、運転手はみんな持っていますよ』といった話をよくします。乗客は知人に『ポケトーク、売れてるんだって』と伝え、これが広まっているようです」

コロナ禍とポケトーク

「火のない所に煙は立たない」という諺があるとはいえ、Xの投稿やタクシー車内の世間話だけでは単なる噂に過ぎない。そこで家電量販店の大手2社に取材を申請した。

 まずビックカメラに取材を依頼し、「翻訳機は売れているか?」「その中でポケトークが占める割合は?」「購入層の特徴はあるか?」の3点を質問すると文書で回答があった。

《今年の3月頃より売行きが伸び始め、現在は昨年比およそ3倍弱の実績となっております。ご購入頂く大半の方が「ポケトーク」をお選びになります》

《国内のお客様が海外旅行に行かれるにあたり購入を検討頂く事が多いです》

 ビックカメラの《今年の3月頃》という回答は興味深い。この時期、コロナ禍で落ち込んでいた航空需要が復活してきたという報道が散見されるからだ。

 例えば、NHKは3月7日、「成田空港 コロナ禍で落ち込みの航空需要回復の兆し 着陸料や賃貸料など減免措置終了」との記事を配信し、以下のように報じた。

《1月の運航状況を見ると感染拡大以前の2019年の同じ時期と比べて、▼国際線の旅客便はおよそ6割、▼国内線ではほぼ同じ水準まで、それぞれ回復》

 日本と海外の往来が復活したことが、ポケトークの売れ行きを伸ばしたということなのだろう。

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