遅刻、物忘れ、遺失…ネット上にはフワちゃんを心配する声が多数 発達障害の専門医はどうみているか

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自分の“浮いてる”部分

 例えば、BRUTUS(電子版)が配信した「タレント・フワちゃんが語る、わたしの百読本『自分は自分のままで、じゅうぶん素敵』」(2021年12月14日配信)には、以下のような記述がある。

《小学校のとき、抜けた歯を誰よりも高く投げたくて体育倉庫の上までよじ登ったり、ホッカイロの中身が砂鉄だって聞いて、それを確かめたくて全校集会の最中にホッカイロを切り刻んで磁石で実験してみたりして。そんなもんだから、お母さんが学校によく呼び出されてた》

《学生時代の私は相変わらず変だったけど、友達も多かったし運動もできたから、悩みごとも無く楽しく過ごしてたんだ。でも年を重ねていくにつれて、なんだか自分の“浮いてる”部分が如実に出てきて、周りもみるみる大人になって、いよいよいつまでも楽観的ではいられなくなってきた》

《大学は3限からでも遅刻しちゃうし、何回やってもバイトはクビ。夢を叶えるために入った芸能事務所もお偉いさんに中指立てて解雇!》

 インタビュー記事から、ADHDの特徴の一つである衝動性が子供の頃からあったことが分かる。

「他の精神疾患と同様に、『なぜADHDの患者さんは忘れ物や遅刻、衝動的な言動が多いのか』という原因については、はっきりと分かっていません。ただ、ADHDには治療薬があり、その効き方から考えて、脳の神経伝達物質の機能障害であろうと推測されています。ただし推測止まりで、それ以上のメカニズムについては解明されていないのです。ADHDの患者さんに関する臨床例が積み重なったことで、忘れ物や遅刻が多いという共通点が明らかになったわけです」(同・岩波氏)

ADHDの武器

 意外に思う人もいるかもしれないが、ADHDの患者が良好な人間関係を構築する人は少なくない。フワちゃんがインタビューで《友達も多かった》と振り返ったことと合致する。

「ADHDの方は、いわゆる“ファーストタッチ”が上手です。初対面の人でも、すっと入っていける。だから営業職を得意にする人も多いのです。しかし、悪意がないとはいえ、率直すぎる発言が多いという特徴もあります。これが好感を持たれる場合もありますが、裏目に出ることも珍しくありません。例えば、私の患者さんで、重要な会議で上司がプレゼンを行ったのですが、その際に明らかな間違いがあった。すると部下だった患者さんは、『そこは違います』と滔々と弁じてしまいました」(同・岩波氏)

 もちろん悪意は微塵もない。単に間違いを指摘しただけだ。とはいえ、上司の面目は丸潰れになった。その後、上司は査定の際、彼に対して常に低い評価を与え、悩んだ部下は岩波氏の診察を受け、自身がADHDだと理解したという。

「ADHDの患者さんは『空気を読めない』という指摘を目にすることもありますが、これは正確ではありません。空気を読めないのはASDの患者さんです。ADHDの患者さんは空気が読めるのですが、『読まない』のです。空気を読むより前に、頭に浮かんだことを衝動的に口にしてしまう。会社員なら大変なトラブルに発展することもありますが、お笑い芸人には武器になり得ます。フワちゃんの奔放な発言は話題を呼び、賛否両論の議論を巻き起こしています。こう考えると、ADHDの患者さんは芸能界向きと言えるかもしれません」(同・岩波氏)

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