沖縄もいずれ「中国領」と書かれてしまう? 中国政府発表の新地図でついに「台湾が領土に」

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「失地意識」

 南シナ海にはすでに20年代から強い関心が集まっていたが、30年代に始まった日中戦争で日本に東北部を奪われたことにより国土意識が高まった。さらに第2次大戦後、フランスやイギリスが植民地にしていた東南アジアの国々が次々に独立するに至って、過去の栄華が見直されるようになってきた。

 かつて明の時代には海洋貿易が盛んで、東南アジアの朝貢国とひんぱんに交易してきた。明代の鄭和(ていわ)が千隻の船団を組んで航海したという「西洋くだり(南海遠征)」(広東省以西の海を「西洋」、広東省以東を「東洋」と称した)が、その象徴である。南シナ海はかつて「中国の庭」だったのに、それを諸外国に奪われてしまったという「失地意識」が生まれたのだ。

 とはいえ、国民政府が「国恥地図」を作った目的は国民教育のためであって、決して対外的に主張するためのものではなかった。

まずは地図を広める

 しかし、90年代から大きく経済成長した中国は、国民をひとつにまとめるために、再び愛国主義教育が必要となった。国民の不満の矛先をそらすために、国外に仮想敵国を設定し、国内の団結を図ろうという意図だ。

 97年の「香港返還」は、愛国主義を盛り上げる好機だった。阿片戦争でイギリスに奪われた香港が戻ってくるのを記念して、「国恥地図」の復刻版が出版され、国恥意識をあおったのである。

 そして21世紀、経済大国になった今こそ「失地回復」して、「本来の姿」に戻すべきだという強い使命感に突き動かされるようになった。

 さて、今回の「2023年版標準地図」の発行元である中国自然資源省は、毎年複数の地図を発行しているが、これまであまり注目されたことはなかった。それがにわかに注目されたのは、ASEAN関連首脳会議(9月5~7日開催)やG20(9月9~10日開催)が間近に迫った時期の発表であったからだが、なぜ、この時期だったのか。

 自然資源省のウェブサイトをみると、「地図は誰でも無料で閲覧・ダウンロードできます。メディアで使用するのも可能です」と書いてある。あえて、この時期に発表したことにより、案の定、世界中の関心事となり、報道ではダウンロードされた地図が軒並み掲載されている。うがった見方をすれば、中国は経費をかけずに世界中に新地図を広めて認識させたかのようだ。反発は承知の上で、やがて静まるだろうという安易な見通しを立てているのではないか。

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