「甲子園2時間ジャック」に「巨人ナインへ生卵50個攻撃」 大顰蹙を買った阪神ファン“恐怖の暴走史”

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「何で中止や!」

 岡田阪神の18年ぶりVも秒読み態勢に入ったが、8月24日に球団が公式X(旧ツイッター)で試合観戦時のマナーについてファンに注意を喚起したように、これからXデーにかけて、エキサイトしたファンの“暴走”も心配される。過去において、一部の心ないファンが起こした顰蹙モノの騒動を振り返ってみよう。【久保田龍雄/ライター】

 9年ぶりVがかかった1973年のシーズン最終戦で巨人に0対9と完敗した直後の数千人のファンによる暴動、1985年のV決定直後にカーネル・サンダース像を道頓堀川に投げ込んだ事件とともに、今も“黒歴史”として語り継がれているのが、1985年6月30日の“甲子園ジャック”事件である。

 31勝19敗4分で首位の阪神は、6月28日から3.5ゲーム差の3位で追う巨人と本拠地・甲子園で3連戦が組まれていた。だが、同日の第1戦は7本塁打を被弾し、1対14と大敗。翌29日は雨で中止となり、雪辱を期待していたファンをガッカリさせた。

 さらに6月30日も天候が心配されたが、「天気は小康状態。台風接近は21時ごろ」の予報を受け、開催を決定したことが裏目に出る。

 試合開始2時間前の13時に開門したが、10分後には雨が降りはじめ、グラウンド状態が悪化。14時15分に中止が発表されると、皮肉にも青空がのぞきはじめたことから、2日連続中止に苛立っていたファンの不満が爆発した。

 14時半ごろ、右翼席の阪神ファンが左翼席になだれ込み、巨人ファンに喧嘩を売る騒ぎを起こす。さらに14時50分、15、6歳の若いファンを中心とする約1千人が「何で中止や!」「客を何と思うとるんや」などと叫びながら、右翼フェンスを乗り越えてグラウンドに乱入。球場側も警備員30人が“人間バリケード”をつくって制止に努めたが、多勢に無勢、あっという間に突破された。

外野フェンスに有刺鉄線

「明日、阪神タイガースが練習を行いますので、支障のないようお願いします」とアナウンス嬢が呼びかけても、まったく効果はなく、約10人が一塁側ベンチを占拠。「ワテが吉田(義男監督)や!」「優勝や!」などと喚きながら気勢を上げた。グラウンド上でも雨除けのシートをはがしたり、応援旗を持って走り回ったり、やりたい放題。リリーフカーを乗り回し、「優勝パレードや、それいけ!」と悪乗りする者まで現れた。

 15時10分、警官約30人が出動。ガードマンとともにファンと小競り合いを繰り返しながら、スタンドに戻るよう説得を続け、16時35分、ようやく騒ぎは収束したが、グラウンドには空き缶、空き瓶、紙テープ、弁当箱などが所狭しと散乱していた。

 2時間近くにわたる“球場ジャック”に、吉田監督は「このような種類のファンには応援してほしくない」と呆れ顔。エース・池田親興も「自分たちの仕事場を荒らされるのはたまらない気持ちだ」と遺憾の意を表した。

 球場側も非常手段として7月5日の広島戦から有刺鉄線を張り巡らすことを決め、野球の試合をプロレスのデスマッチさながら有刺鉄線越しに見るという異常事態となった。

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