閉所恐怖症の私が窓のない部屋で連日、取り調べられて…大川原加工機「女性社員」が証言する“警察庁公安部の恐ろしい手口”

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「罪を認めている」の嘘

 12月には原宿署に呼ばれて取り調べが始まった。最初だけは大川原社長らと一緒だったが、その後は1人で通うことがほとんどだった。

 主にAさんを調べたのは、警視庁公安部外事一課の田村浩太郎という警部補だった。

「最初は私がどれくらい輸出に関与しているかの取り調べでしたが、次第に島田さんや社長たちがどのような話をしていたかを聞き出す目的に変わったようでした」

 噴霧乾燥機や輸出入に詳しい取締役の島田氏は、捜査本部にとって核になる存在だった。

「島田さん が社長らとどういう話をしていたか、といったことを訊いてきました。相嶋さん(静夫氏=拘留中にがんが悪化して死去。享年72)を含めた3人の幹部が共謀して不正輸出していたことにしたがっていたのだと思います。でも、私の職場は2階で、社長らがいるのは3階なので、『そんなことわかりませんよ』と突っぱねていました。実際に3人で相談をしているところなど見たこともありませんでした」

 それでも、田村警部補は「島田は罪を認めるような発言をしている」とまで言い、執拗に訊いてくる。嘘を言って混乱させようとしているのがAさんにはわかった。

「島田さんがそんな事を言うわけはないと思い、本人に確認しますと言いました。また、私に責任を押し付けるような人ではないことは、長い付き合いですからよくわかっていました」

逮捕される恐怖

 田村警部補はAさんの言葉尻をとらえては調書を改ざんし、警察の意に沿うように仕立ていたという。

「調書では、島田さんが『これ(大川原化工機の噴霧乾燥機)は非該当(外為法に抵触しない)に“しておいたから”大丈夫』と言ったようにされたんです。島田さんは『非該当だから大丈夫』という意味で言ったのに」

 他にも上海の合弁会社のことを訊かれたが、Aさんは詳しくなかった。他の従業員にも些細なことまで尋ねたという。

「会社にあった若い頃の安倍(晋三)元首相とロシア人女性が並んだ写真に興味を持った公安は、彼女についてうちの従業員の何名かに話を聞いていたらしいです。彼女は通訳をしてくれていただけです。公安は何でもいいから法に引っかかるようなことを必死で探している様子でした」

 そして、2020年3月11日、大川原、島田、相嶋の三氏が逮捕された。

「会社に来た捜査員は、私の机も荒らしました。逮捕されるのではないかと怖がっていると、若い男性の警官が『大丈夫ですよ』と言ってくれました。捜査員の中にも血の通った人間がいると思いました」

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