閉所恐怖症の私が窓のない部屋で連日、取り調べられて…大川原加工機「女性社員」が証言する“警察庁公安部の恐ろしい手口”

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 2020年3月、大川原化工機(神奈川県横浜市)の大川原正明社長ら幹部3人が「武器に転用できる噴霧乾燥機を中国に不正輸出した」との外為法(外国為替及び外国貿易法)違反の容疑で警視庁公安部に逮捕された。のちに起訴が取り消しとなるまで、逮捕された3人だけでなく同社の社員に対しても苛烈な取り調べが行なわれた。それが原因でうつ病を発症した女性社員Aさんの体験を聞いた。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

「触るな」と怒鳴られた

 Aさんは貿易実務検定の資格を持つベテラン社員で、この冤罪事件で11カ月もの間、逮捕・拘留された元取締役の島田順司氏の直属の部下でもあった。

 2019年10月3日朝、横浜市に住むAさんが出勤のため最寄り駅に向かおうとすると、スーツ姿の男女が現れた。「外為法違反容疑で家宅捜索令状が出ています」と声を掛けられ、自宅に押し戻された。

 なんのことかさっぱりわからなかったが、Aさんが会社に電話しようとすると「会社へは電話しても無駄ですよ。あなたが出勤しないことは知っています」と止められた。夫が出勤した10分ほど後だった。

「捜査官らは夫の出勤時間も調べ、私をつけ回していたようでした」(以下Aさん)

 Aさんが捜査員に容疑内容を訊いても「会社のことです」と言うだけだ。

「携帯電話やパソコンだけでなく、服の入った抽斗(ひきだし)を捜索しようとするので、『夫の物です』とか『息子の物です』と言うと手はつけなかったですね」

 自分の鞄を持とうとしたら、中年の女性警官が「触るな」と怒鳴った。腹が立ったAさんは男性警官に「あの女の人は帰してください」と言ったという。

 警官は私服でパトカーに乗って来たわけではなかったが、押収物を持ち去る段ボール箱には「警視庁」と大書きされている。近所の人に変な噂でも立てられたら自宅に住めなくなると懸念したAさんは、「箱を使わないで手で運んでください」と訴えた。

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