「障害」「セクシズム」「差別」問題から逃げず、忖度せず… 角田光代が語る、韓国ドラマのすごみ「感動してしまうほどの情熱」

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 なぜ人々はこれほどまでに韓国ドラマに吸い寄せられ、時を忘れて没頭するのか――その秘密を、「制作サイドの情熱」という観点から作家・角田光代が分析した。

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 韓国の映画にもドラマにも共通しているなと思うのは、韓国の人たちって、善意だとか友情だとか、すごく美しいものを信じているということ。歴史の上で分断と合併を繰り返し、今は完全に南北に分断されている。でも韓国ドラマや映画を観ていると対話によって人は分かり合えると信じているように思います。それはなぜなのだろう、と考えてしまいます。

 障害やセクシズム、差別などの問題からも逃げない。忖度しないですよね。社会問題の描き方も容赦がなく、鋭いです。

 私は日本のドラマも好きで観るのですが、あるドラマに出てくる女性3人、男性3人のうち、女性は全員「男性たちの夢の応援団」のような描き方がされていました。多分、韓国ドラマにハマる前だったら、何も考えずに楽しんで観ていたと思う。でも今はそれを観ていると、違和感を抱くようになってしまいました。

これまで観たことのないような心理劇

 最初にハマったのは韓国映画でした。きっかけとなった作品は「シークレット・サンシャイン」。作家の吉田修一さんに「これは本当に面白いから」と薦めていただいたのです。

 観てみると本当に面白くて。幼児誘拐が題材で、結論らしい結論は描かれない。しかし、人間の奥深さみたいなものを映像で見せつけてくるのです。これまで観たことのないような心理劇が描かれ、何だろうこれは、と思わせられるほど、強く引き込まれました。

 最近の映画だと、「三姉妹」もすごかった。支配的な父親の元で育った三姉妹が、大人になった現在、ともかく過酷な現実を生きているんだけれど、どこかコミカルで、ラストシーンは驚くほど光に満ちている。

 それから、「オアシス」。脳性まひの女性と社会に適応できない男性の恋愛が描かれるものの、それを全く美化していない。「三姉妹」の次女役、ムン・ソリの演技がすさまじい。体力の消耗が激しいので切れ切れでしか演技ができなかったと何かで読みました。韓国映画のすごいところが出ている作品です。

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