「得意料理はきんぴら。飯を作ることが精神の安定にもつながる」 主演作が途切れない82歳「藤竜也」が語る仕事と人生

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 1962年に「望郷の海」でスクリーンデビューを飾り、2022年に俳優生活60周年を迎えた藤竜也が、8月27日に82歳を迎えた。今年は「それいけ!ゲートボールさくら組」に続き、2本目の主演作「高野豆腐店の春」が公開中だ。さらに、来年公開の「大いなる不在」が9月開催のトロント国際映画祭コンペティション部門に選出されたため、映画祭に出席する予定だという。今も第一線で活躍し続ける藤に、仕事と健康、人生について話を聞いた。

脚本から聞こえる声に従っている

 風情ある尾道を舞台に、豆腐屋を営む職人気質の父・高野辰雄(藤竜也)と、一人娘・春(麻生久美子)が織りなす日々を描いた「高野(たかの)豆腐店の春」。三原光尋監督からその脚本が届いたのは、コロナ禍が始まって間もない頃だった。

「これから世の中はどうなってしまうんだろうと、暗澹たる気持ちでいる時でした。監督の手紙には『いつ撮影に入れるか、そもそも作品自体撮ることができるのか、全く当てはありません』と書かれていました」

 すぐに脚本を読んだ藤は、感想を手紙にしたため、「何年でも待ちますから、ぜひやってください」と速達で返事を送った。藤が出演を決める基準は、どこまでも脚本だという。「前回一緒にやったから」「巨匠だから」という選択肢はない。藤の代表作となった「愛のコリーダ」(1976)も、脚本を読んで出演を決めたという。

「大島(渚)さんの脚本だからってことじゃなかったですね。力ある脚本、しかもえらい切り口のラブストーリーだと思いました。惚れるってことを、男女が体を重ねる肉体で表現する。その手法はかなりヤバいけど、ここから逃げたら自分の中で尾を引くだろうと。脚本はいいと思っているのに、びびったからと出演を見送るなんてできなかった」

「愛のコリーダ」以外にも、転機となった作品はいくつもある。

「仕事のたびに、その作品が岐路になる可能性はありますね。フリーランスという部分は不安定だけど、やっていて面白い。脚本を読んでいると、『これはやったほうがいい』『やめたほうがいい』と、脚本が言ってくれる気がする。その声に従っている感じです」

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