7月に入っても絶好調 アメリカの株高はいつまで続くか

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学生ローンの返済再開が及ぼす負の影響

 そのせいだろうか、米国民の間で節約志向が広がっている。歯磨き粉などの生活必需品を切り詰める動きが顕在化し、裕福な消費者までもがディスカウント・ストアへ足を運ぶようになっているなど、メディアはさまざまに報じている。

「弱り目に祟り目」ではないが、3年にわたって延長されてきた学生ローンの支払い猶予が終わることも、個人消費にとって大きな足枷だ。新型コロナのパンデミックを受けた学生ローン返済の猶予措置は、3年間で9回の延長という形で行われていた。

 その措置をひっくり返したのは、政府の債務上限問題をめぐる与野党協議だ。措置の打ち切りが決まったことで、今年9月から約2700万人が返済を迫られることになった。これにより、ミレニアル世代やZ世代の支払い余力が減じ、他の債務に負の影響が及ぶのではないかと危惧されている。

 データおよび分析サービスのグローバル企業「Experian」の調査によれば、ミレニアル世代やZ世代の54%は経済的に親を頼りにしているという。学生ローン返済の再開により彼らの金欠状態に拍車がかかれば、米国の個人消費全体が失速してしまうかもしれない。

 実体経済から乖離した株高が持続するとは思えない。残念ながら、米株が今後急落する可能性は高いのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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