公安部警察官が「まあ、捏造ですね」「捜査員の欲でそうなった」前代未聞の証人尋問で明らかになった不正捜査の数々【大川原化工機事件】

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「事件が潰れる」と追加実験をさせない

 武器に転用できる製品の輸出を禁止する外為法違反とされたのは、大川原化工機の主力製品「噴霧乾燥機(スプレードライヤー)」だ。噴霧乾燥機は、ステンレス容器内に噴射した液体に高熱をかけて瞬間的に粉末にする装置である。炭疽菌などをばら撒く生物兵器に転用される可能性があるとされ、「輸出には経済産業大臣の許可を得る必要がある」という規制がある。

 輸出規制の対象は、扉を開けたり装置を移動したりせずに内部の滅菌・消毒(殺菌)ができるもという条件がある。しかし、大川原化工機の噴霧乾燥機は、熱風を吹き込んでも機械内に温度が低いままの部分があり、完全に滅菌・消毒(殺菌)することはできないことが同社の実験で確かめられた。つまり輸出禁止の条件には当てはまらないのだ。

 ところが、警視庁は独自に実験を行い、完全に滅菌・消毒(殺菌)できると主張。実験に関わっていた時友警部補はこの日、「捜査を尽くすために追加の実験を上司に進言したが、『余計なことをするな。事件が潰れたらどうするんだ』と叱責された」と明かした。「事件が潰れる」とは、有罪立証ができなくなることだ。

起訴取り消しの経緯

 高田弁護士は、東京地検が突然、起訴を取り消した経緯も質問した。

 濵崎警部補は「呼び出されて東京地検に出向いたのは、小長光副部長、渡辺誠警視と私で、駒方和希検事が対応した」と答えた。

 その際、小長光副部長が説明した起訴取り消しの理由については2つあるとした。「殺菌性能を証明できない。乳酸粉末菌の実験で殺菌できなかったから」という理由と、「法令解釈を裁判官に説明できない。メモ(捜査メモ)を読むと意図的にねじ曲げたと判断される」ことだという。

 さらに、高田弁護士が「捜査幹部は回収容器の底部は噴霧乾燥機の内部に該当しないとの整理に変更したということか?」と聞くと、濵崎警部補は「はい」と肯定した。要は、温度が上がってくれない部位は都合が悪いので、そこは噴霧乾燥機の内部ではないと勝手に定義してごまかしたのだ。

 こうした現職警察官による異例の「捏造告白」を引き出せたのは、高田弁護士の緻密な調べに基づく優れた尋問の成果である。彼らは正直だったのだろうが、数々の鋭い質問にごまかしようがなく、観念したのだろう。

 高田弁護士は、この日の成果を3点挙げた。

【1】公訴取消の理由の部分で、検察官が警察に対して理由説明の際に「法令解釈を裁判官に説明できない。捜査メモを読むと意図的にねじ曲げたと判断される」と言ったこと

【2】当初難色を示していた経産省が2018年2月8日、急に「ガサは良いと思う」と言って協力姿勢を示したこと

【3】塚部(貴子)検事が逮捕後と起訴前、公安部に対して「自分に知らないことがあるなら問題だ」と怒ったこと

 7月5日には起訴の際の責任者だった塚部検事の証人尋問が予定されている。

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