小田急線刺傷事件裁判 対馬被告が語った「パン工場夜勤」「コンビニバイト」の困苦 「周りは何不自由なく暮らしているのに僕だけが不幸」

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 映画「ジョーカー」の主人公のように社会への恨みを募らせていたのか――。6月29日、2021年に走行中の小田急線車内で3人の乗客が刺傷された事件で、殺人未遂などの罪に問われている対馬悠介被告(37)の裁判員裁判第3回公判が東京地裁で開かれた。この日、弁護側の被告人質問に立った対馬被告は、初めて公の場で事件を振り返った。事件の背景には抜け出せなかった貧困があった。

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心が擦り切れた

 上下とも黒のシャツ、ズボン姿で法廷に現れた対馬被告は、弁護人の質問に淡々と、時に身振り手振りを交えながら答えた。

 まず問われたのは、凶行に至るまでの暮らしぶりだった。事件が起きたのは2021年8月だが、対馬被告は3月から生活保護を受給していて当時は無職だった。

――どうして生活保護を申請しようと考えた?

「2月まで仕事をしていましたが、限界だと思って退社してしまいました。仕事を探していましたが、これ以上は無理だと思った。気持ちを落ち着かせて、ゆっくり仕事を探そうと」

――限界と言いましたが、心の状態はどうだったの?

「今までアルバイトを転々としてきて、もうこれ以上、僕にできる仕事はないなと。この先、生活していくのは無理だと」

――心が疲れた?

「心が擦り切れた、という表現が近いと思います」

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