NHK捏造映像を“スクープ”した40代元職員「暗部ちゃん」とは何者なのか 告発の源は「NHKへの復讐心です」

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無能のレッテル張りをしたNHKが許せない

 沸点に達した怒りが退職後の告発活動に火をつけた。辞める前から「一生NHKと戦い続ける」と覚悟を決めて、ネタを仕込み、退職1カ月後の8月にSNS活動を開始。これまでの10カ月間でnoteに書いた記事は200本を超える。最初の3カ月間は毎日一本、勤務後に深夜2時くらいまで家にこもって執筆し続けていたという。

 その原動力は何かと聞くと、暗部ちゃんは臆することなく「復讐心です」と答えた。

「公共放送としての使命に忠実に働き、実績を残した人間に対して無能のレッテルを貼り、逆に、不正をしたり社内不倫して遊んでいるような輩たちを厚遇するあの組織が許せなかった」

 最近は“スクープ”も放った。12日にBPO審議入りした「ニュースウォッチ9」の“捏造VTR”問題を誰より早く呟き、世に知らしめたのは暗部ちゃんである。ツイートはTwitterのトレンド入り。実は、各社、暗部ちゃんからの情報提供がきっかけで取材に動いていた。

「いまは仕事の関係で、第一報として情報発信はできても、当事者に当たる裏取り取材や当て取材はできません。だから、貴重だと思う情報は付き合いのある記者さんたちに振って動いてもらうようにしています」

 情報源は“暗部ちゃん応援団”の現役職員たちだ。

「コアメンバーとなった45人くらいが定期的に情報提供してくれています。彼らは匿名Twitterから連絡してくるので、実は僕は相手が何者か知らないし、聞かないようにしています。NHKが僕のアカウントを常時監視しているからです。実際、実名アカウントで『いいね』を押して、上司から呼び出されて大目玉を喰らったという報告を受けたことがある。もちろん、匿名情報についてはなるべく複数に当たり、ウラ取りしてから発信するよう努めています」

戻りたいという気持ちもある

 かくして実績を積み重ねてきた暗部ちゃんではあるが、この先、どこへ向かっていくつもりなのか。

 今年1月にNHK会長は前田氏から稲葉延雄氏にバトンタッチ。稲葉氏は就任早々、「改革の検証」を前面に打ち出し、4月には前田政権下に行われた人事制度改革を検証するチームも立ち上げた。立ち向かうべき“巨悪”は去った。

「確かにあの時、前田さんが今の稲葉さんのように改革に対して一歩立ち止まって考えていてくれていれば、辞める必要はなかった」

 こう語った後、暗部ちゃんは意外な“本音”を漏らした。

「僕が今一番望んでいることは何かと言われれば、絶対に叶わないとわかってはいるけれどNHKに戻ることですかね。あの仕事が好きでしたから」

どっちが勝つかぶっ倒れるまで勝負しようぜ

 だが、もう後戻りはできない。活動を支援してくれる顔も知らない45人の仲間の思いも背負っている。だから、「やれるところまで活動を続けていきます」と決意を語る。

「まだ前田体制の混乱は続いていますし、今も局内には、受信料で私腹を肥やしたり、適当な取材で歪んだ報道をする職員が何百人も巣食っています。NHKの看板を背負うに相応しくない職員を告発し続け、外部からNHKの健全化を図っていくのが僕に課せられた使命だと思っています。この活動をお金に変えようなんてまったく思っていません。NHKの隠蔽体質と僕の取材力。どっちが勝つかぶっ倒れるまで勝負しようぜって気持ちでやっています」

 活動の源泉にあるのは、復讐心であり、男の意地であり、そして胸の底に今なお横たわる“NHK愛”なのである。

デイリー新潮編集部

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