NHK捏造映像を“スクープ”した40代元職員「暗部ちゃん」とは何者なのか 告発の源は「NHKへの復讐心です」

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人生を変えた前田前会長の人事制度改革

 2007年にディレクター職で入局。地方局勤務を経て、東京の制作局で約10年間、昼の中継番組や朝の情報番組、「NHKスペシャル」などを担当してきた。最後の1年間は上司からCP(チーフプロデューサー)業務を任され、70本以上の番組を制作したという。

「Nスペにいた頃にコロナ禍が始まったんですが、それからは科学番組を作った経験を活かし、コロナ報道に明け暮れました。僕はNHKが国民から一番求められている役割は緊急報道だと思っています。未曾有の事態の中で、コロナについての正しい情報を発信し続け、国民生活に貢献できた満足感があった。視聴率も良く、上司からも早く正式にCPとして番組を引っ張ってほしいと言われていたので、昨年1月に昇進試験を受けたのです」

 前田晃伸・前会長が「年功序列や縦割りを是正する」と2021年1月に人事制度改革を行なった際に新たに導入された昇進試験である。管理職は基幹職と名称変更され、アルファベットでTM(トップマネジメント)、M(マネジメント)、Q(品質・業務管理)、P(専門)の4ランクに区分された。

「僕はPという実務力が評価される職種に応募しました。すでに制作現場で実質的に管理職の仕事をしていましたので楽勝だと思っていたんですが……」

 だが、結果はまさかの不合格。そして、暗部ちゃんはブチギレたのだった。

“直訴メール”まで送ったが…

「それまで僕の人事査定は最上位で、さらに職員の中でも数人にしか与えられない特別加算を2回連続で得ていました。適正検査はすでにパスしているので、そもそも実務能力についてとやかく言われる筋合いなんてないんです。試験結果にはフィードバックもあったんですが、開けてみて唖然としました。評価が高かったところに『人財育成』とあり、悪かった点にも『人財育成』とある。意味がわからないじゃないですか。コスト意識とも書かれてありましたが、僕ほどコスト意識を持って視聴率を取っているディレクターはいないという自負もあった。それで人事に納得できないと駆け込んだんです」

 実はこの昇進試験に対して不満に思ったのは暗部ちゃんだけではない。「評価が高い人間がなぜか落とされ、評価が微妙な人が受かる」とあらゆる部門で不満が渦巻き、局内は一時大混乱に陥ったのだ。あのころ、記者たちは『もう夜廻りはやめて作文教室に通おう』と不貞腐れていたという。

「僕はどうしても納得いかず、前田会長に“直訴メール”まで送った。直属の上司も同情してくれ、最後は制作局の幹部が人事に抗議してくれたんですが、結局、結果は覆りませんでした。前田さんはあの人事制度改革を利用して管理職に若い女性を増やしたかっただけだった。登用したい人は最初から決まっていたんです。馬鹿馬鹿しくなって、昨年の7月に辞めました」

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