「フルニトラゼパムだけで二人とも死亡は不自然」 元科捜研のスペシャリストが読み解く「警察が公表していない事実」

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向精神薬は補助的に使用される

 科捜研で働いてきた経験で言うと、フルニトラゼパムのような睡眠薬は、ガス自殺や、電気コードを巻き付けて行う感電自殺の際に併用されるケースが多い。私の現役当初はフルニトラゼパムの本邦販売はなく、同じベンゾジアゼピン系のニトラゼパムが自殺の際に使われることが多かった。しかし、ニトラゼパム単体の使用で自殺を図って亡くなられた方は見たことがありません。

「検死における向精神薬の統計的観察」という論文には次のようなデータが紹介されています。11年10月から16年12月までの期間、愛媛県警の管内でフルニトラゼパムを使用した自殺と突然死が245件報告された、と。ただ、死亡状況を見ると、縊死(いし)が最も多く、その次が飛び降りとなっている。つまり、向精神薬は補助的に使用され、直接の死の原因にはなっていないことが分かります。

 もちろん、ご両親にどのような持病があったのかなどにもよりますが、フルニトラゼパムだけの使用で二人とも亡くなったというのは不自然です。確率的にはかなり低いと思います。他の薬品を併用したか、二人が眠っている間に何かが起こったと考える方が自然です。警察は捜査上、秘密の暴露になる可能性があるということで、公表していない事実が何か他にあるのではないでしょうか。

藤田義彦 元徳島県警科捜研 藤田法科学研究所所長

週刊新潮 2023年6月22日号掲載

特集「『猿之助』破滅への道 『香川照之』の行く末は…『梨園の心中』私はこう見る」より

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