強欲インフレに不動産バブル崩壊の危機…危なすぎる欧州政治の行き着く先

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富の減少に直面しつつある欧州市民は極右支持へ

 英国では、競争・市場庁が5月中旬「食品企業などが価格高騰により不当な利益を享受していないか調査する」ことを明らかにするなど政治問題化しつつある。

 食料インフレを問題視する欧州中央銀行(ECB)は6月15日の理事会で追加利上げに動く構えだが、その一方で「根強いインフレとの闘いが金融システムの脆弱性を露呈させる」との危機感を示している。

 米国では商業用不動産市場の焦げ付きが懸念されているが、「欧州の商業用不動産の価値は40%下落するリスクがある」との指摘があり(5月11日付ZeroHedge)、欧州の方が深刻な問題を抱えている。

 ECBのさらなる利上げが引き金となって不動産バブルが崩壊すれば、欧州全域が深刻な資産デフレに陥り、ユーロ圏の大手銀行さえも深刻な打撃を受けることになるだろう。
国債 相場 富の減少に直面しつつある欧州市民の支持は、極右に傾きつつある。

 ドイツの公共放送ARDが6月1日に発表した世論調査では、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率が18%だった。この数字は、ショルツ首相が率いる社会民主党と同率の2位である。AfDはロシア寄りの姿勢が問題視されているが、他の世論調査でも同様の傾向が出ている。

 フランスでもマクロン大統領の支持率が急低下しており、「極右のみが不満の受け皿だ」との声が伝わってくる(4月8日付ロイター)。スト発生件数が30年ぶりの高水準となっている英国も、政治情勢は不透明だ。

 今後、欧州政治の極右化が急速に進んでしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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