韓国に比べてかなり低い「日本の若者」の留学意識 オペラの世界で実感することは?

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 日常的にオペラの世界を眺めていると、韓国人の歌手が欧米で、日本人の歌手の数倍は活躍していると実感する。

 たとえば、4月にイタリアのボローニャでヴェルディ作曲の『シチリアの晩鐘』というオペラを鑑賞した際、主役のテノールはジェイムズ・リーという韓国人だった。同様に、キャスト表に韓国人の名を見る機会はきわめて多い。

 欧米の一流劇場で上演された最新のオペラ公演の映像を映画館で楽しめるライブビューイングでも同様だ。5月に「MET(ニューヨークのメトロポリタン歌劇場)ライブビューイング」で上映されたヴェルディの『ファルスタッフ』では、ナンネッタ役を韓国人のソプラノ、ヘラ・ヘサン・パクが歌い、6月に「英国ロイヤル・オペラ・ハウス シネマシーズン」で上映されるプッチーニ作曲の『トゥーランドット』も、フィギュアスケートで有名なアリア「誰も寝てはならぬ」を歌うカラフ役は、韓国人テノールのヨンフン・リーである。

 4月にイタリアで、ドイツで活動している日本人のソプラノと会話した際も、いつも「韓国人か」と尋ねられ、「日本人だ」と答えると「珍しいね」と言われる、と話していた。

以前は、日本人のオペラ歌手が欧米でなかなか活躍できない原因として、欧米人との骨格の違いが指摘されることが多かった。しかし、少なくとも骨格構造は日本人とほとんど変わらない韓国人がこれだけ活躍している以上、事情はほかにあるとしか考えられない。そこで思い当たるのは、日本の若者がきわめて内向きになっている、という話である。

日本人は短期留学生が大半

 イタリアの音楽院で学んでいる日本人の若い歌手は、こう語っていた。

「こちらの音楽院に入って驚いたのは、ほかの国からの留学生がみな、音楽で食べていくために真剣に学ぼうとしていること。日本の大学にいたときの、周りの仲間たちの意識とまるで違っていて驚きました。かなり強い気持ちを持たないと、こちらの学生たちに置いていかれてしまいます」

 むろん、これは歌手をめざす若者にかぎった話ではない。最近の若者の動向や積極性を探るために、日本人の留学生数を確認しておきたい。

 OECD、UNESCO、米国国際教育研究所(IIE)などによる統計をもとに文部科学省が集計した日本人留学生数は、2020年に4万2,709人だった。ただし、この年は新型コロナウイルス感染症の影響が大きいと考えられるので、それがおよんでいない2019年の数を見ると6万1,989人。1998年にはじめて7万人を超え、2004年には8万2,945人を記録したが、それがピークで以後は長期低落傾向にあり、6万人を切る年が多い。

 ただし、この集計は高等教育機関などで学んでいる長期留学生を中心とした数字。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の要請で、一般社団法人海外留学協議会(JAOS)が集計したデータによると、2019年度の日本人留学生は10万7,346人、18年度が11万5,246人である。

 だが、2019年度の人数の内訳をみると、1カ月未満の留学が7万1,263人と圧倒的に多く、1カ月以上~3カ月未満が1万408人で、3カ月以上~6カ月未満が1万1,404人。半年未満が9万3,075人と全体の約87%を占めている。1カ月未満という旅行に毛が生えた程度の滞在でも留学と呼ぶのは事実だが、多くの人がいだく留学のイメージが数カ月以上の長期留学だとすれば、日本人の本格的な留学生はとても少ないことがわかる。

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