性行為は好きではなかったはずなのに…41歳男性が明かす、恥ずかし過ぎる“人妻との出会い”から家庭崩壊まで

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いっしょに離婚の意志を伝えよう

ふたりは密かに会い続けた。一方で、夫からもたまに連絡があった。「覗きに来てほしい」と。麻理子さんからは断らないでほしいと言われていたので、彼は夫の要望に応じたが、ふたりを覗くのはつらかったという。嫉妬が爆発しないよう、見ている間ずっと自分の太ももをつねり続け、痣を作ったこともある。後日、麻理子さんがその痣を見て泣きながら唇を押し当ててきた。

「1年ほどたったとき、僕らはもう我慢できない状態になっていました。どんな犠牲を払っても一緒になろうと決めたんです。彼女にも10代の息子がいるんですが、それでも離婚すると。『ふたりともこの日に言おう』と決めた日があって、僕はそこで恵未に離婚したいと伝えました。だけど翌日、麻理子から連絡があって昨日は言えなかった、と。夫の父親が亡くなったからって。彼女、義父母と同居していたんです。急だったため、夫も義母も、そして祖父にかわいがられていた息子も悲しみに沈んでいて、今はとても言い出せないと彼女は泣いていました」

 先に離婚を言ってしまった彼だが、麻理子さんの気持ちを慮ると「わかった」としか言えなかった。恵未さんは離婚の理由を言えと迫ってくる。「ひとりになりたい」と彼は言った。

「無責任すぎる。家庭はどうするつもりなのと恵未は怒っていました。そりゃそうですよね。『浮気してるんでしょ。それはそれでいいから離婚は考え直して』とも言われました。浮気はいいんだ、と少しガッカリしたのを覚えています。勝手ですけどね」

欲求も何もかも失って

 自宅はもともとリフォームしたときに恵未さんの名義にしたため、彼は「養育費は支払うから」と家を出た。恵未さんは「生活費も払ってよ」と言ったが、「きみも働いているんだから、あとできちんと考えよう」と告げた。自分はATMのように思われていたのかという思いが強かった。

「それから3年、今も別居は続いています。僕は小さなアパートでひとり暮らし。麻理子とは何度か会いましたが、結局、彼女は離婚を言い出すことができなかった。今はもう会ってもいません。彼女にだまされたのかと疑心暗鬼になった時期もありましたが、あのときの彼女の気持ちは本当だったのだと信じたい。不思議なことに、僕が長年苦しんできた『覗きたい欲求』もなくなってしまいました。性的欲求ももはやありません」

 この春、長男が中学に入学した。彼はこっそり入学式を見に行った。制服に身を包んだ長男を一目見て、その場から姿を消したのだが、携帯を手に入れたという長男からその日のうちにメッセージが来た。

「来てくれたのを知ってるよ、ありがとうって。息子はこんなオレを父親だと思ってくれているのかと泣きました。それ以来、息子とはときどき連絡をとっています。恵未が僕の悪口を言わないから息子が優しいのかと思って妻に感謝していたら、『おかあさんもおばあちゃんも、昔からおとうさんの悪口ばかり言ってた。僕はそれが嫌だった』と息子から聞かされた。家庭はずっと以前からおかしくなっていたことにも初めて気づかされた。僕自身の家庭へのスタンスが間違っていたんでしょう」

離婚は時間の問題

 何もかも僕がいけなかったんだと彼はつぶやいた。どこからこうなったんだろうと考えれば、かつての母親の行為に思いが至る。両親は結局、離婚もせずに今も一緒にいるのだから、夫婦関係はわからない。

「うちは子どもたちが大きくなったところで離婚ということになると思います。なんだかんだ揉めながらも離婚しない両親や麻理子夫婦と、うまくいっているようで実は信頼関係が築けていなかったんだろう僕ら夫婦。ここ数年でいろいろなことがありすぎて疲れました」

 今は仕事場とアパートを往復する日々。毎日少しずつ、彼は自分の子どものころからの思いを書き綴るようになった。手書きで文字を綴っていると気持ちが落ち着くという。

「先日、久々に高校時代の友人に会ったんです。オレたち、人生の折り返し地点にいるんだなという話になりました。まだこの先が長いのかと愕然としましたが、それでも生きていかなければいけない。過去を検証しながら未来を生きていける土台を作るのが僕の今の目標です」

 話し疲れたのか、少しやつれて見えた秀顕さんだが、去って行くその後ろ姿は意外にもしっかりしているように見えた。

前編【自身の「覗き見」趣味に悩む41歳男性 原点は幼少時に目撃した母親の“ありえない振る舞い”】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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