「死んで生まれ変わろうと……」 独特な死生観を持つ市川猿之助と哲学者・梅原猛の関係

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「三代目は太陽、君は月だ」

 梅原氏は、著書『水底の歌 柿本人麿論』(新潮社)で、柿本人麿は時の政権によって流罪となり、正史から抹殺されたと推論した。そして、この人物を、スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』の対の存在ととらえて、当代猿之助のために戯曲化しようと考えていた。

「梅原先生は、三代目は太陽で、君は月だ、とよく仰っていた」(前同)

 ヤマトタケルは「天翔ける心」で上へ向かって飛翔する、それに対し、ヒトマロは「水底」へ向かって下降する、ということらしい。

 そのせいか、梅原氏が亡くなったとき、当代猿之助は、こんなコメントを寄せている。

「冷静に受け止めました。死がすなわち終わりだとは考えていませんから。長く梅原先生のご著書を愛読してきて、僕の体には先生の考え方が染みわたっているのでしょうね」(前同)

 今回の騒動について、猿之助は「死んで生まれ変わろうと話し合った」と述べているという。 

“梅原学”には、たしかに「死」や「鎮魂」にまつわる論考が多い。それだけに、実生活と一緒になってしまったのかもしれない。

 だが猿之助は「スーパー歌舞伎II」として、《空ヲ刻ム者》《ワンピース》《新版オグリ》を発表してきた。そして来年には《鬼滅の刃》を初演する予定だった。

 実は梅原氏には鬼の論考もある。《鬼滅の刃》こそ、猿之助が信奉し、研究してきた“梅原学”を生かせる集大成にできたのではないか。

デイリー新潮編集部

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