妻から「いいわよ知ってるから」と言われ…その瞬間、40歳夫が「不倫を続けているのがバカみたいだと思った」理由

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前編【40歳夫が「妻公認の不倫」をするまで はじまりは上司から命じられた奇妙な仕事だった】からのつづき

 徳田勇弥さん(40歳・仮名=以下同)は、妻公認のもとで不倫を続けている。大学卒業後に勤めたブラック企業で、彼は部長に命じられるままある女性を“誘惑”。ところがそれは部長の妻で、彼女と別れ社内の不倫相手と再婚したいがための策略だった。利用された勇弥さんは失意の末に退職しひきこもりに。その後、なんとか再就職を果たし、4歳年上の茉利さんと社内結婚した。そうして親類が集まる場に、勇弥さんも招かれたのだが……。

 ***

 勇弥さんが茉利さんの親戚の中に見つけたのは、前の会社の部長だった。勇弥さんに妻を誘惑させた張本人だ。

「ショックでした。あちらは『徳田くんじゃないか』と笑いながら近づいてきましたけどね。そして耳元で『あの折はありがとう』って。彼が再婚した相手は僕も知っているわけですよ。彼女もニコニコしながら『徳田さんのおかげよ』と言いました。僕、そのままトイレに行って吐いてしまった。自分の内臓を引っ張り出されて踏まれたような気分になって」

 部長は茉利さんの父親の末弟だった。あまりにありふれた苗字だったから、血縁関係などまったく疑わなかったのだ。

「ああいう人と親戚になってしまったことが、なんだか割り切れなくて。かといってあの一件を茉利には言えなかった。茉利は正義感が強い女性ですけど身内のことだからどう思うか想像もつかなかったし。ただ、あの部長と茉利の父親は兄弟だけあって、どこか体質的に似ている気がしました。自分の思いは周囲への気遣いなく押し通す。茉利の父親もそんなタイプに見えました」

妻の「生まれ育ち」にまで嫌悪感

 茉利さんには関係のないことだったが、勇弥さんの茉利さんへの気持ちは少しだけ変わってしまった。言いたいのに言えないモヤモヤを抱えたままの新婚生活は、すんなりとはいかなかった。

「茉利の愛情が濃ければ濃いほど、僕は引いてしまう。もともとそんな感じだったところに部長の一件が重なって、茉利の生まれ育ちにまで嫌悪感を抱いていきました。しかも茉利は部長である叔父さんととても仲がよかったんですよ。僕が叔父さんの元部下だとは知らなかったし、それだけは知られたくなかったけど。茉利が『叔父は再婚なのよ。奥さん、若いでしょう? 前の奥さんがひどい浮気女だったらしくて』と言ったことがあるんです。息が止まりそうでした」

 茉利さんが叔父夫婦を家に呼びたいと言ったときは全力で阻止した。とにかくあのころのことは思い出したくなかったのだ。せっかく結婚したのに、鬱々とした日々が続いた。

「せめて子どもができれば家庭を大事にすることもできたのかもしれませんが、茉利は実は子どもが嫌いだと結婚してから聞きました。『子どもはいらない、ピルを飲んでるから』と言われました。性生活も彼女がストレス発散したいときだけ。彼女はいつも自分が上になって攻撃的なんです。何かを振り切りたい感じで。それがせつなかった。通常は寝室も別です。奇妙な生活でした」

 それでいて勇弥さんへの行動チェックだけは厳しかった。会社にいるときはもちろん、彼が同僚に飲みに行ったことも彼女には筒抜けだった。どうやら彼の周りの誰かを巻き込んで、茉利さんが報告させているようだった。強気で仕事最優先、周りを鼓舞しながら元気を振りまくタイプの茉利さんだが、実際は自分の夫を支配しなければ自分を保てないのかもしれない。勇弥さんはそう分析した。

「実は僕たち、似ているのかもしれないと思いました。僕も自分にまったく自信のないタイプだった。でも僕はそれを逆転させて強気になることはできず、茉利は外に向かって自信のなさを逆転して見せられる。むしろ、そうしなければ生きていけない。根っこは似ているんですよ。だから茉利を責めることはできなかった」

 責めることはできなかったが、うっとうしさは増した。だが、茉利さんの強気の裏の自信のなさはおそらく、あの家父長的な父親から来ているのだろうと想像すると離婚を考えることはできなかった。

「根本的なところで共感しあえる部分はあった。茉利もそう思っていたんじゃないでしょうか。支配しているように見せて、実は強烈な承認欲求があったんだと思う。だから家にいるときは『茉利が好きだ』と僕はよく言いました。少しでも彼女の心が穏やかになればと思って」

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