救急搬送の「市川猿之助」 評論家が語る“9歳の舞台で見せた驚くべき才能”“歌舞伎界の大混乱”

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 5月18日、歌舞伎役者の四代目市川猿之助(47)が自宅から救急搬送された。彼の命に別状はないものの、同居していた母親の喜熨斗延子(きのし・のぶこ)さん(75)はその場で死亡が確認され、父親で歌舞伎役者の四代目市川段四郎(喜熨斗弘之)さん(76)は搬送先で亡くなった。何があったのか詳細は不明だが、歌舞伎界にとってあまりにも大きな損失であることだけは間違いない。

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 5月3日に幕を開けた「明治座創業150周年記念 市川猿之助奮闘歌舞伎公演」は19日、昼の部を九代目市川中車(香川照之=57)の長男・五代目市川團子(19)が、夜の部を中村隼人(29)が代役を務め、28日までの公演を続けると発表された。「若手歌舞伎」(新読書社)の著書もある歌舞伎評論家の中村達史氏は言う。

「変更を余儀なくされるのはそれだけではありません。6月には『六月大歌舞伎』(東京・歌舞伎座)の昼の部があります。7月の『七月大歌舞伎』(同前)の昼の部では、三代猿之助四十八撰のうち『通し狂言 菊宴月白浪』を、猿之助の演出・出演で従兄弟の中車と共演する予定でした。さらに8月の『八月納涼歌舞伎』(同前)の第三部、9月の『市川猿之助特別公演』(京都・南座)で『新・水滸伝』を披露することが発表されていました。『七月歌舞伎』は先代から受け継いだ公演ですし、『新・水滸伝』も先代が定めた家の芸です。猿之助が出られないとなると、演目も変更せざるを得ないかもしれません。松竹は今、大混乱していると思います」

 来年の2月と3月には、スーパー歌舞伎Ⅱ「鬼滅の刃」(東京・新橋演舞場)も予定されている。なぜこれほどスケジュールが詰まっているのだろう。

「もちろん彼の人気と実力、そして集客力があるからです。人気は十三代目市川團十郎(45)と双璧、芝居の上手さでは同世代では頭ひとつ抜けていると言っていい」

 芝居の上手さは、子役の頃から際立っていたという。

天才子役

「彼がまだ9歳の時のビデオが残っているのですが、こんなに上手い子役がいるのかと度肝を抜かれますよ。踊りの上手さはもちろんのこと、歌舞伎で重視される間も完璧で、すでに自信を持って踊っている。しかも無理矢理やらされている感はまったくなく、客を乗せる愛嬌、余裕まで備えていました」

 83年に二代目亀治郎を襲名した。その頃には父の段四郎にセリフをつけていた、という伝説さえある。

「明治になってからできた一門の澤瀉屋(おもだかや)は、歌舞伎界では比較的新しい家ですが、その立場を逆に利用して、先代猿之助(二代目猿翁=83)のスーパー歌舞伎に代表される江戸から続く名家にはできない試みを演じてきました。亀治郎時代はほぼ女形専門でしたが、猿之助を襲名する前から芸域を広げ、何でも演じるようになりました。早変わりが得意で、しかもどんな役でも上手いというのは衆目の一致するところ。今でも女形は特に優れていると思います。なんというか、女性を演じる仕草、立ち居振る舞いが素晴らしいんです」

 四代目猿之助を襲名したのは2012年のこと。先代は叔父にあたる。

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