祖父母の「孫費用」は年間75万円! 少子化を救う「孫育て」のカギはお金?

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名誉回復のチャンス

 子ども夫婦と風通しよく意思疎通ができて、金銭的、時間泥棒的なトラブルを回避できれば、「孫育て」はペットを飼うより面白い「子育ての追体験」です。

 今の祖父母世代が若かりし頃は、モーレツ仕事人間がイクメンを目指す夫族をマウントしていました。

 出産時にも産褥期(さんじょくき)にも仕事場を離れず、家庭での子育ては妻に丸投げ。最も人手が欲しい乳幼児期にも不在か無視した結果、妻の夫への愛情度が急降下し、長く回復しなかった事例の研究発表もあります。身に覚えのある夫にとって、「孫育て」は名誉回復のチャンス到来です。自分の手で孫を世話して初めて「こんなに大変なことをやってくれてありがとう。あの時はそばにいてやれなくてすまなかった」と妻に心から言えるでしょう。壮年期を振り返り、懐かしむ意義深い時間を作ってくれるのが「孫育て」の効用ですから、ぜひ夫婦で関わってみてください。

「孫育て」に関わる前に、子育て常識が昔と今では異なるので、最新の育児本を読んでおきましょう。40年前の母乳信仰と抱き癖撲滅は科学的根拠無しと判明し、現代ではミルク飲み放題、抱き放題です。日光浴はお散歩に置き換わり、排泄機能が大人と違う乳幼児にはトイレトレーニングは不要。夜尿も年齢とともに小学校入学までには自然に収まるので、寝ているのを起こしてトイレに連れていくのはNG。オムツ代はかかりますが、理にかなっています。

 これらの育児知識を若親世代は学習してわかっていますから、「私たちの時はこうした」などと祖父母の体験を押し付けない方がいいでしょう。

働く母親を傷つける「3歳児神話」

 ところで、否定されてもされても不死身のように復活してくるのが、3歳までは母親がそばにいないと悪影響が出るという「3歳児神話」です。母親は3歳までは仕事をせずに家庭で育児に専念すべきだという説が1951年にイギリスで発表され、それが日本に入るや独自の「母性愛信仰」になったため、多くの働く女性の心を傷つけました。

 以後、日本でも欧米でも研究が進み、「安全な環境で愛情をもって養育されることが大切。母親だけでなく、父親、祖父母、シッター、保育士など複数の人による養育でもよい」と何度も証明されています。母親が不安そうなら「大丈夫、よく育っている。この子が一番かわいい」を口癖にして、母親の神経を逆撫でしないように見守ることが上手な孫育ての秘訣(ひけつ)です。

 最近、SNS上で「目立ちたい」「いいねをクリックしてほしい」若者が飲食店などで迷惑行為に及ぶ事件が後を絶ちません。これらは、幼い頃に周囲に存在を認めてもらえず、褒められず、叱られもしなかったため、成長後に「たとえ悪事や悪ふざけをしてでも」自分がここにいるのを他者に承認してほしいと欲求した結果だと思います。

 20年ほど前ですが、私が非常勤講師を務めていた国立山梨大学で、250人の学生にアンケートを実施したところ、「人付き合いが苦にならない」「自分は協調性がある」「他人に迷惑はかけない」と答えた学生の約8割が、祖父母と同居か近居していました。財布からお札を抜いたのがバレて、「盗人(ぬすっと)を置いてはご先祖様に申し訳ない」と祖父に家から追い出されたり、逆に祖母の家に立ち寄ると「育ち盛りは腹が空く」といつも友だちにもおにぎりを振る舞ってくれた。子どもの自分を「一人前」として扱ってくれることがうれしくて、祖父母の前では素直になれた、親より甘えられたと、思い出を語ってくれました。

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