祖父母の「孫費用」は年間75万円! 少子化を救う「孫育て」のカギはお金?

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身内だからこその課題

〈こう解説するのは、出版社の電話相談室で子育てや教育の相談を受けてきた、家族問題評論家の宮本まき子氏だ。22年間に受けた相談件数は2万件。時代背景と連動する親子関係の変化を指摘してきた「子育てアドバイス」のプロである。

 彼女が近年、説いているのが「孫育てのススメ」だ。総共働き時代にあって子育てに欠かせない「人の手」が不足している。地縁・血縁の絆も薄れ、事件や感染症を恐れて人との距離を取り過ぎて子育て環境が危うい。そこで祖父母の出番となるが、身内だからこその課題やトラブルもあるという。孫育てに関する著作もある宮本氏の知見に耳を傾けてみよう。〉

 20年春、コロナ禍で全国一斉に休校・休園となった時は大混乱でした。育児世代の母親の就業率は75%超で、全員が翌日から休暇が取れるわけはありません。感染を恐れて隣人もシッターも近寄らなかった時、全国で大勢のジジ・ババが子育て補助のため駆け回りました。後から思えば、感染した際の死亡率が高い高齢者を大移動させたのですから、本末転倒です。

「孫育て」が問題解決のヒント?

「人の手が無ければ子育ては機能停止する」という常識に、政治家や官僚は気付かなかった。その無知を補ったのが、肉親の情で動いた祖父母の手助けでした。

 コロナ禍でなくとも、保育園や学校から、子どもの発熱や事故などで突然の呼び出しが来れば、両親ともに急には仕事を抜けられず、祖父母が駆け付けます。06年の野村総合研究所の調査によると東京都では41%が親世代と1時間以内の距離に住み(近居)、少なくない人が子育て支援を親たちから受けていて、別居なのに大家族のように行動しています。祖父母との連携なしでは精神的にも経済的にも厳しいと悟ったからでしょう。未婚者が周囲の実例を見て、親たちの支援があれば、結婚も子育てもできそうだと踏んでいるフシもありそうです。そう考えると、少子化問題解決のヒントは「孫育て」に潜んでいると思うのです。しかし、そこには立ちはだかる壁もあって……。

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