実はロシア経済は意外と堅調、それに比べ欧州経済はかなり深刻…経済制裁の代償という皮肉

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3月にモスクワで起こった“意外な出来事”

 ロシアの首都・モスクワで5月9日、プーチン大統領の出席の下、対ドイツ戦勝記念日の軍事パレードが行われた。赤の広場で毎年行われるこの軍事パレードには、戦車や大陸間弾道ミサイル、戦闘機などが参加する。ロシアの軍事力を世界に誇示する格好の場だ。

 だが、今年は1時間足らずという短い時間で終了。参加した兵器の種類や量は、例年に比べて非常に少なかった。さらに、安全保障上の懸念から、ロシア各地で実施されていたイベントの多くが中止または大幅な縮小を余儀なくされた。

 日本を始め西側メディアは「ウクライナ戦争の長期化で疲弊するロシアを象徴している」と報じている。

 西側諸国から厳しい制裁を課されたロシア経済も「青息吐息」だと評されることが多い。だが、軍事パレードが行われたモスクワで今年3月、意外な出来事が起きていた。

 中国の北京市を抜いて、世界最長の地下鉄(ビッグサークル線)の全線が開通したのだ。31の駅を1時間30分かけて1周する地下鉄の全長は70キロメートルだ。

 モスクワ市は4月中旬に行われた外国メディア向けツアーで「車両はすべてロシア産技術を使っている。制裁の影響は受けていない」と強調した(5月5日付朝日新聞)。「制裁の影響がない」というのは誇張だろうが、ロシア経済が比較的堅調なのはたしかだ。

 インフレ圧力は引き続き高いものの、S&Pグローバルが5月2日に発表した4月のロシア製造業購買担当者景気指数(PMI)は52.6と、好不況の分かれ目となる50を12カ月連続で上回った。将来の生産の見通しも過去4年で2番目の高水準となっている。

 ロシアの富豪の総資産は、ウクライナ侵攻直後の大きな落ち込みから回復しつつある。経済誌『フォーブス』のロシア版は、ロシアの富豪の総資産が昨年比で1520億ドル増加し、5050億ドルとなったことを報じた。

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