数字を見れば不吉な予感…アメリカ経済はリーマンショック時よりも悪化するかもしれない

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M2の減少が米国経済全体に悪影響を及ぼす可能性

 にわかに想定しづらい事態だが、米国で大量の銀行が破綻した前例があるのは事実だ。
 1929年9月の米株式市場の暴落に端を発した世界恐慌のせいで、1933年の米国の国内総生産(GDP)は1929年の4分の3の規模にまで縮小した。

 米国では多数の銀行が破綻に追い込まれており、預金引き出しを求める国民が「長蛇の列」を作るのは当たり前の光景となっていた。

 この事態を重く見たルーズベルト大統領は就任直後の3月6日、4日間の全国銀行休業日(バンク・ホリデー)を宣言し、すべての銀行を閉鎖させて取り付け騒ぎを沈静化させた。米国人にとっては忌まわしい記憶だが、悪夢の再来を予感させる兆しがここにきて出ているのは気がかりだ。

 FRBの利上げがもとで米国全体のカネの流れが不振となっており、3月のマネーサプライ(M2)が前年に比べて4.05%減少した。M2減少は第2次世界大戦後初めてのことであり、世界恐慌真っ只中の1933年12月以来、約90年ぶりのことだ。

 マネーサプライとは世の中に出回っているお金の量全体を指し、現金や普通預金に加え、解約が容易で決済手段として使える金融資産(定期預金など)が含まれるM2が代表的指標とされている。

 米国のM2は毎年増加するのが当たり前だとみなされており、2008年の金融危機や2020年のコロナ禍でも増えていた。このことからわかるのは、足元のM2減少は今後、米国経済全体に悪影響を及ぼす可能性が高いということだ。

「1930年代の悪夢が再来する」と断言するつもりはないが、米国経済がリーマンショック時以上の深刻な打撃を被るのは確実なのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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