弾薬持ってこいや! ワグネル創設者とプーチンの“本当の関係” 専門家は「プリゴジンの本音はウクライナ侵攻どころではない」

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戦わないロシア軍

 ところが、プリゴジン氏は国防省の発表に先立ち、国防次官を辞めるミジンツェフ大将にワグネルの第1副司令官を打診すると明らかにしたのだ。

「プリゴジン氏とショイグ国防相の人間関係は悪化する一方です。読売新聞は記事で《プリゴジン氏は、バフムト全域を制圧できない責任をショイグ氏に転嫁しようとしているとの見方が出ている》と伝えました。ショイグ国防相が交代を命じたミジンツェフ大将をワグネルで優遇する姿勢を見せたわけですから、当てつけとも考えられます。プリゴジン氏は『部下に責任はない。ショイグ国防相が無能なのだ』というメッセージを送ったのかもしれません」(前出の記者)

 中村氏は「ロシア軍の弱体化は著しく、国軍として機能しなくなるのも時間の問題でしょう」と指摘する。

「ウクライナ軍の善戦で、ロシア軍は多大な損害を被ってきました。徴集兵で穴埋めを図っていますが、攻撃力も士気も乏しく、軍隊として機能していません。バフムトの最前線に立っているのはワグネルの傭兵と囚人兵であり、正規軍は後方に展開しています。ウクライナ軍と戦っていないので、司令部に正確な戦況すら入ってこないとも言われています」

 ロシアでは9日、戦勝記念日で軍事パレードが行われたが、規模の縮小や中止が目立った。欧米や日本のメディアは「ロシア軍の疲弊が浮き彫りになった」と報じた。

中国とも蜜月

 中村氏は「ワグネルが国軍に“昇格”するのも現実味を帯びてきました」と言う。

 ワグネルは中国の極秘支援を取り付けたという情報もあるという。それに関しては、イギリスのフィナンシャルタイムズが逆の報道をしていた。4月20日、2023年始めにワグネルが中国に武器の供与を求めたが、中国は拒否したことが明らかになったと伝えたのだ。

「ところが、フィナンシャルタイムズの報道とは異なり、ワグネルは習近平国家主席(69)と武器支援の密約を結んだと言われているのです。習主席が“ポストプーチン”を見据え密約を結んでも不思議はないと私は考えています。ロシア軍の弱体化は著しく、ウクライナ戦争の完遂どころか、国内動乱に対応できるかも怪しくなってきました」(同・中村氏)

 ウクライナ戦争で戦果を挙げられないプーチン大統領は、常に失脚のリスクがある。もしクーデターが現実のものになれば、成功しても失敗しても、ロシア国内は大混乱に陥るだろう。

 その際、弱体化したロシア軍では対応できない可能性がある。国境を接する中国としては、ロシアの不安定化は絶対に避けたい。

「習主席は、ワグネルが国軍になったほうが治安維持に合理的と考えているのかもしれません。中国もロシアとウクライナの停戦を望んでいます。スーダンにおける金の採掘権確保というのが理由だとしても、プリゴジン氏が停戦を主張しているのは中国にとっても好都合です。関係を深めることにメリットは見出せても、デメリットはないでしょう」(同・中村氏)

獄中のキーパーソン

 中村氏は「ロシアの専門家は今後、プリゴジン氏がどこまで停戦実現に向けて動くかを注視します」と指摘する。

「鍵を握るのは、ロシアの反体制派、アレクセイ・ナワリヌイ氏(46)です。ナワリヌイ氏は2021年に帰国して身柄を拘束され、刑務所に収監されています。ここで重要なのは、プリゴジン氏は囚人兵のリクルートを行うためにロシア全土の刑務所を自由に出入りしていたことです。様々なパイプを持つプリゴジン氏が動けば、ナワリヌイ氏と獄中で極秘に面談することも可能でしょう。ワグネルという軍事組織を持つプリゴジン氏と反プーチンのシンボルであるナワリヌイ氏が手を組み、ウクライナ停戦を掲げてクーデターを起こせば、国民が熱狂的に支持する可能性も否定できません。プリゴジン氏がプーチン大統領を裏切るのか、最後まで忠臣として仕えるのか、大きなポイントだと思います」

註1:ワグネル創設者プリゴジン氏「弾薬不足が解決されなければ前線から撤退」(テレ朝NEWS:4月30日)

註2:プリゴジン氏「ワグネル消滅したらロシア官僚のせい」(同:5月2日)

デイリー新潮編集部

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