警視庁公安部の闇 報告書に「私が言ってもないことが書かれている」 防衛医大校長がずさんな捜査に怒り

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「申し訳なく、後悔」

 起訴取り消しの際、警視庁は冤罪だったことを認めたが、謝罪ひとつなかった。

 逮捕された大川原正明社長、島田順司専務、相嶋静夫顧問の3人は否認を貫いていたため、平均330日も保釈なしで勾留されていた。このうち相嶋氏は、勾留中にがんが進行しながら適切な処置を受けられずに72歳で亡くなった。現在、東京地裁では、大川原化工機が東京都と国に対して起こした約5億6000万円の損害賠償請求の裁判と、相嶋氏の妻ら家族が起こした裁判が進んでいる。

 四ノ宮氏は「特定の会社の人を起訴するような目的で彼らが来ていたのなら、もう少し説明の仕方があったかもしれないと思い、亡くなった方をはじめ大川原化工機の皆様には本当に申し訳なく、後悔しています」と話す。

 3月1日の東京地裁での口頭弁論で、高田弁護士は証人尋問の予定者を裁判長に説明した。大川原社長、島田氏、相嶋氏の長男の他、法に関与した経産省関係者、当時の公安部捜査官、起訴した検事らを予定している。

 警視庁の捏造工作が民事訴訟の場で衆人に晒されることになるのか――。

 警視庁公安部外事第一課に対して「安積警部補は四ノ宮教授が言ってもいないことを供述調書や捜査メモに記録したことは全くないか」「あったとすれば本人の判断か、それとも上司の判断か」という質問を文書で送ったところ、5月1日に同庁広報課広報4係から電話で「係争中の事案につき回答を控えさせていただきます」と予想通りの回答があった。

粟野仁雄(あわの・まさお)
ジャーナリスト。1956年、兵庫県生まれ。大阪大学文学部を卒業。2001年まで共同通信記者。著書に「サハリンに残されて」(三一書房)、「警察の犯罪――鹿児島県警・志布志事件」(ワック)、「検察に、殺される」(ベスト新書)、「ルポ 原発難民」(潮出版社)、「アスベスト禍」(集英社新書)など。

デイリー新潮編集部

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