結婚するまで女性を知らなかった43歳夫の告白「いま思えば、奇妙な母子関係が大きく影響した」

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 ある人の性に対する好奇心や性欲の強弱は、もって生まれたものなのだろうか。あるいは成長するにしたがって培われていくものなのか。何かの機会さえあれば、誰もが突然、性の魅力にはまってしまうことがあるのだろうか。

 そういうことが長年の疑問だったのが、「ずっとまじめに生きてきて、性への好奇心もほとんどなかったのに、ある日突然、ひとりの女性と出会って彼女との性にはまった」という男性がいる。いったい、何がきっかけでそうなったのだろう。興味津々で会いに行くと、スーツ姿の彼はほぼ直角にお辞儀をして「初めまして」と顔を上げた。端正な顔立ちだが、少しだけ垂れた目が人のよさを感じさせる。

「ここ1年ほど、底なし沼にはまったような気持ちなんです。自分が自分でないような……」

 困惑したような、それでも若干うれしそうな表情で、東上幸平さん(43歳・仮名=以下同)はそう言った。“恋”をしているのだろう。

「恋なのかなあ。恋というのは、もっとほんわかしたものだと思っていたけど。自分が自分でいられないんですよ」

幸平さんが育った教育ママ家庭

 幸平さんが結婚したのは28歳のとき。相手は当時の上司が紹介してくれた、上司の親戚に当たるひとつ年下の美和さんだ。

「きっちりした娘さんでした。僕自身、きっちり育ったので彼女となら相性がいいかなと思ったんです。小学校から女子校で、女子大を出て働いていました。仕事はしていきたいけど今の会社にはこだわらない、自分のキャリアより家庭を優先したいと美和は言ったんです。その日は上司立ち会いだったんですが、その1回で結婚を決めました」

 上司にそう告げると、美和さんも同じ気持ちだと返事をもらった。結婚式までにふたりきりで会ったのは3回だけ。もちろん手ひとつ握らないまま結婚した。

「彼女のお父さんは公務員、お母さんは専業主婦。彼女はひとりっ子ですが、両親ともに『娘は嫁にやるもの』と思って育てたと言っていました。かなり古いタイプですよね。とはいえ、僕自身もそれほど家庭環境は違わない。父はお堅いサラリーマンですが、母はときどきパートもする主婦で、僕は妹のいる長男。両親は見合いで結婚、特に仲がいいわけでもないけど悪いわけでもない。ただ、母がかなりの教育ママでしたね、僕に関しては。母は僕が生まれるまで高校の数学の先生だったんです。どうしてやめたのかわからないけど、母もまたあまりキャリア志向ではなかったんでしょうね」

 小中学校は近所の公立だったが、高校は国立に入るよう厳命された。しかも塾には行かせてもらえず、独学を強いられた。ときに母が教えてくれたが、少しでも間違えると30センチの竹の物差しでびしりと足を叩かれることもあった。

「今だったら虐待だと言われちゃいますよね。足はけっこう痣ができていましたよ。だけど勉強さえしていれば、母は愛情深かった。おやつは毎日手作り。ドーナツやクッキーがおいしかったなあ。成績が上がると、母の特製のケーキが待っている。母に褒められるためだけに勉強していました」

 もともと素直だったのか、そうなるようにある種の“去勢”がなされていたのか、彼はひたすら勉強に励んだ。中学生のときはバスケットボール部に入ったが1年生だけでやめた。

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