とにかく明るい安村、なかやまきんに君… 第7世代とは逆を行く「裸一貫芸人」躍進の理由とは?
もう中のブレークも…「有吉の推し」というお墨付きの安心感も後押しか
同じような流れでは、「もう中」こと、もう中学生さんのブレークも記憶に新しい。やはり彼も、ずっと段ボール芸をかたくなに貫いているアラフォー芸人である。
彼らのブレークには、「有吉の壁」の功績は大きいはずだ。もう中さんや安村さん、パンサーの尾形さんなど、有吉さんからの当たりが強い芸人は、みな存在感を発揮するようになっている。それは単純に有吉さんの人気というよりは、彼の手抜きを許さない目線を視聴者も感じているからではないだろうか。
有吉さんは、「ちょっとこれは自分でも詰めが甘いと思ってる」という、自信がなさそうな芸人の表情を見逃さない。お前が面白くないと思ってるものは他人が見ても面白いわけないだろ、という判断基準を崩さないのだ。特に安村さんに対しては厳しく、安村さんも返し切れていないことも多い。勢いで乗り切っている時には容赦なくダメ出ししているが、不合格を出されるまでがパッケージとして成立している。あのやり取りに「安村さんって一生懸命な人なんだな」と好感を抱く人も多いと思う。かつては自宅を水浸しにしてまで有吉さんを笑わせようとしていた人だ。
かといって、不器用さに甘えるようなあざとさを有吉さんは許さない。芸は未熟でもキャラがいいので万事OK、という見え方をさせない。何度でもバツ印を出して追い込んでいるからこそ、視聴者も安心して安村さんを応援できる空気ができているのだろう。
ちなみに有吉さんの盟友であるマツコ・デラックスさんも、安村さんやもう中さん、きんに君を褒めていたことがある。マツコさんもまた、小賢しい打算を嫌う人だと世間では認知されている。要領良く、効率良く、というスマートさが礼賛される世の中で、「変わらない」というより「変えられない」彼らの不器用さは、ある意味で異様に映る。その気持ち悪さを、有吉さんとマツコさんが認めたというお墨付きは、裸一貫芸人たちの再ブレークを後押しした。それだけでなく、彼らを応援する視聴者をも肯定してくれたような効果をもたらしたように思える。
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