寝たきり老人を激減させた「奇跡の村」 102歳医師が明かす「死ぬまで元気」の秘訣

ドクター新潮 ライフ

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100歳超えとは思えない食事量

 では病院食のような食事なのかというと、そうではない。たとえば、ある日の朝食はこんなメニューだ。

 5枚切りの食パン1枚にバター10グラム、ハチミツ大さじ1杯を200ccの牛乳に入れて加熱し、ミキサーにかけたパン粥をメインに、ヨーグルト、ホウレンソウ、バナナ、リンゴ、ハチミツを加えたスムージー。そして、卵1.5個分のやわらかいオムレツと納豆、甘酒を80~90cc、そして最後は栄養補助食品のメイバランスを一本――。とても100歳を超えた人の食事とは思えない量だが、これでもずいぶん減ったそうである。

 私が疋田さんに初めて会ったのは20年も前のことだ。当時、高齢になっても寝たきりにならず、元気で自宅で過ごすための生き方を住民に説いていたが、その彼が100歳になる前までかくしゃくとしていたのは、自らそれを実践してきたからだろう。では何が彼を元気にさせていたのか。当時の取材ノートを参考に、その秘訣を探ってみたい。

「満足死」を学会に発表

 国立京都病院(現在の京都医療センター)の内科医長だった疋田さんは50歳を機に退職すると、予防医学をやりたいと当時の佐賀町にやってきた。1972年のことである。そこで彼は、余命いくばくもないのに、どうせ死ぬなら家で死にたいと退院してきた患者を引き受けたことで「満足死」という思想に思い至る。その患者が亡くなる数日前に「先生、ありがとう」と手を合せて感謝し、遺族からも感謝された。その体験から「本人の満足、家族の満足、医療側の満足」を満たした死を「満足死」として学会に発表した。

 そこで、みんなが望む満足死とはどんな死なのか、疋田さんはあらためて住民に尋ねた。すると圧倒的に多かったのが「死ぬまで元気でいて、逝くときは自宅でぽっくりと逝きたい」だった。どうすればぽっくり逝けるのだろうか。

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