タイで広まる「和牛」 和牛ヤーンに和牛ガパオ…“プレミア感”で中間層の人気を集める

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ほかにも和牛メニューは続々と

 気になってショッピングモールの飲食店をのぞいてみる。Thong Smith(トミンスミス)というタイ風そばのチェーン店にも和牛メニューが登場していた。この店はボートヌードルの店。かつて運河に浮かんだ舟の上で売られていたそばで、豚や牛の血を混ぜたコクのある黒っぽいスープが特徴だ。そこにあったのは、スライスしたオーストラリア和牛を載せた麺。299バーツ(約1163円)だった。ほかの店には日本でも知られるタイ料理のガパオの和牛版もお目見えしていた。

 牛肉好きのタイ人夫婦Pさんは、食べ放題焼肉店で和牛に出会った話を教えてくれた。通常料金の3倍を払うと和牛も食べ放題になった。Pさんはその味をこういう。

「和牛プレミアとメニューには書かれていました。軟らかくて脂身がおいしくて甘い。タレをつけなくても牛肉を味わえる感じ」

 しかし高い。安めの食堂なら60バーツから80バーツといった牛肉料理が、和牛になると3倍近くになる。

タイで流通する「3つの和牛」

 タイには日本から輸入された純粋和牛、オーストラリア和牛、タイ和牛が混在している。オーストラリア和牛は、日本からの輸出に規制がなかった2000年以前に渡った牛やその子孫、タイ和牛はそのオーストラリアからタイに輸入された和牛や精子との交雑種が多いといわれる。どれも違法ではない。

 タイで和牛交雑種の飼育がはじまったのは2008年頃といわれる。試行錯誤を繰り返し、ようやくタイ和牛として市場に出まわるようになった。値段は純粋和牛の約半値だ。

 タイ政府もタイ和牛のPRに力を入れはじめた。昨年12月、バンコクで開かれたAPEC首脳会議では、タイ和牛のなかでも最高ランクの「コーラート和牛」が提供された。コータートは東北タイのひとつの県だ。

 2~3年前まで、和牛は日本からの輸入肉が主流で、タイの富裕層しか口にすることができなかった。1品1000バーツ以上、4000円以上の料理だった。しかしタイ和牛の流通量が増え、中間層でも手が届く価格帯にさがってきたことで、多くの店がメニューにとり入れはじめ、いまの人気に火をつけた。経済成長を享受するタイの中間層は背伸びをして富裕層気分を和牛で味わうという構図がぴたりとはまった。

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