尹錫悦、外交チームを突然「粛清」 レディー・ガガ?日韓関係?米韓首脳会談の直前、飛ぶ憶測

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政権内の亀裂を生んだ対日外交

――日本が一因だったのですね。

鈴置:韓国メディアの報道は次第に「対日外交亀裂説」に傾きました。朝鮮日報の「『ブラックピンク公演を米国が要請』 7回も報告せず…金聖翰更迭の内幕」(3月30日、韓国語版)やハンギョレの「本当にBLACKPINKのせい? 韓国野党『尹大統領は更迭理由を説明せよ』」(3月31日、日本語版)などです。

 先に紹介した中央日報の記事は「国民への説得に安保室が熱心でなかった」と指摘しましたが、問題はもっと根深いところにあるようです。

 尹錫悦大統領は日本との関係改善を掲げました。核武装を進める北朝鮮と対抗するには日本との協力が不可欠だからです(「台湾有事が引き起こす第2次朝鮮戦争 米日の助けなしで韓国軍は国を守れるのか」参照)。

 もちろん、唯一の同盟国である米国も日本との関係改善を強く求めてきました。3月16日に尹錫悦大統領が訪日して岸田文雄首相と会談した直後に、バイデン政権が尹錫悦大統領の4月訪米を国賓訪問にすると発表したことからもそれが分かります。米国は「国賓」をニンジンに使ったのです。

 ただ、尹錫悦政権内部には「日本に屈してまで関係改善を図る必要はない」と主張する対日強硬派が多かった。日本と首脳会談をするのなら、「徴用工」に賠償金を支払う財団へは日本企業にも出資させたうえ、岸田首相には何らかの形での謝罪表明をさせるべきだ、との意見です。

 韓国政府は外相時代の岸田氏を2度も騙した実績があります。今度も押せば言うことを聞く、と考えたのです(「尹錫悦はなぜ『キシダ・フミオ』を舐めるのか 『宏池会なら騙せる』と小躍りする中韓」参照)。

 ところが、「言うことを聞くはずのキシダ」がなかなか言うことを聞かない。2月21日になって岸田官邸は日本の外務省に財団案を拒否するよう指示しました。

 結局、尹錫悦大統領は日韓首脳会談を開くに当たって財団方式も明確な謝罪もあきらめました。4月訪米で成功するには3月訪日を実現する必要があったからです。大統領はその決断に伴い、対日強硬派の金聖翰室長を切り、融和派の金泰孝次長を残したと思われます。

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