交際ゼロ日婚でいきなり妻の妊娠が発覚…真実を知って44歳夫がホッとした理由

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「僕の子でなければ愛せる」

「婚姻届を出したその晩、友香子が具合が悪くなって。心配していたら、翌日、病院に行き、なんと妊娠しているとわかったんです。結婚前、僕らは関係をもってないんですよ(笑)」

 そんな重要なことを、彼は笑いながら言った。ただ、友香子さんが騙したわけでもないらしい。もともと生理不順だった彼女は、妊娠に気づかなかったのだ。

「なりゆき上、誰の子なのと聞いたら、彼女、『たぶん』と僕の知らない男の名前をあげた。ただ、確証はないというんです。それでつい笑っちゃいました。結婚したんだから、僕らの子ということでいいよねと。これは僕と友香子だけの秘密でした。でもそのとき、正直言って、少しホッとしたんです」

 彼は自分の子をもつのが怖くてたまらなかったそうだ。だから子どもはもちたくないとも思っていた。なりゆきで結婚したものの、友香子さんが子どもがほしいと言い出したら困惑したり迷ったりするだろうと想像もしていた。

「僕の子でなければ愛せる。そう思いました」

初めて妻と関係をもったが…

 気持ちが穏やかになった彼は、妻の体を気遣いながら生活を送った。妻もぎりぎりまで仕事をしながらがんばってくれた。

「妻にそっくりな娘が産まれて、子どもってこんなにかわいいのかと思いました。僕の子ではないけど僕の子でもある。そういう状況が自分には合ったんでしょうね」

 結婚して1年たって、妻と初めて性的な関係をもった。安定期に入ったとき大丈夫だからと妻に言われたのだが、彼は怖くてできなかったのだ。

「そのとき、妻はごめんねと泣きました。娘のこともかわいがってくれてありがとうって。でも僕は彼女への同情で一緒にいるわけじゃない。この生活が気に入ってると言いました。自分の子ではないから愛せるとまでは告白できませんでしたが。ただ、そのとき妻が『今度は私たちの子がほしい』と言い出したんです。それだけはできないと言いかけたけど、それはまた改めて考えようと逃げました」

 そのころ彼は30歳になろうかという時期。責任のある仕事を任されるようになり、「中堅スタッフ」として仕事が楽しくなっていった。同い年の妻も似たような状況だったが、「私はちょっと仕事をセーブするわ。娘のことが気になってたまらないから」と時短で仕事をするようになった。

 家庭はうまくいっていた。あとは子どもをほしがっている妻をどうなだめるかが問題だった。そして裕之助さんは、突発的にパイプカット(男性の避妊手術)をしてしまう。

「どうしても自分の血を引く子を作りたくなかった。でも妻には言えない。そこでパイプカットを思いついたんです。日帰りでできるようなので相談に行き、すぐに日程を決めて手術しました。8万円くらいでしたね。そうまでしても自分の子はほしくなかった」

後編【犬にかこつけてご近所不倫…それでも「妻子を裏切っているつもりはない」と44歳夫に言わせる幼少時の記憶】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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