冬ドラマでベストの演技を見せた俳優は誰か 男女の主演、助演で4人を選んでみた

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ベスト主演俳優:草なぎ剛(48)フジテレビ系「罠の戦争」

 プライム帯(19~23時)には15本あった冬ドラマが終わる。見応えのある作品が多かった。その中から、ベストの演技を見せた主演俳優、同女優、助演俳優、助演女優を選んでみたい。

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 草なぎの役柄である衆院議員・鷲津亨は、難役にほかならない。書くまでもないが、キャラクターが変遷したからだ。

 第1話から第4話の秘書時代は優しくて誠実な男だった。ところが、第5話で衆院選に出馬したころから人格が歪み始め、市議会議員たちを買収してでも当選を目指す。

 内閣総理大臣補佐官に任命された第9話以降はゲスな政治屋に過ぎなくなった。家族も秘書もないがしろにする権力の亡者と化す。1クール(3カ月)でこんなにキャラが変わる役柄も珍しい。それでも観る側が付いていけたのは草なぎの演技が巧みだったからにほかならない。

 第4話までの鷲津は表情も言葉使いも穏やかだったが、第5話から変化が始まった。鷲津は衆院選中に事務所内のスパイの存在を確認するため、刑事2人を騙し、秘書・貝沼永太(坂口涼太郎・32)が市議に現金を渡しているように見せかけた。鷲津の表情には猜疑心が浮かび、嫌らしい顔になっていた。

 草なぎが圧巻の演技を見せたのは第10話。鷲津は竜崎始首相(高橋克典・58)に求められたため、自分を中傷する怪文書を配布している犯人をすぐに突き止めようとした。しかし、3人の秘書には仕事がある。急には動けない。

 それを第2秘書の蛍原梨恵(小野花梨・24)が伝えたところ、鷲津の答えは「今なんて? まさか」。自分の都合しか考えなくなっただけでなく、これまで尽くしてきた人間すら信用できなくなっていた。

 この時の鷲津の目からは生気が失われ、表情全体から温かみが消えていた。怒っている顔より、ずっと恐ろしかった。狂気すら感じさせた。

 元東映の名監督で立命館大などで映像学を教えていた中島貞夫氏(88)から、「名優には2通りある」と教えてもらった。

 第1には自分の個性を確立し、それに合った役柄を演じ、観る側を魅了するタイプ。草なぎを買っていた故・高倉健さんらがそう。第2はどんな役にも自分を同化できるタイプ。草なぎはこちらだ。

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