【舞いあがれ!】ようやく判明したオープニング映像に隠されていた「秘密」とは

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町工場街が舞台という点も奏功

 まだある。悠人は喫茶店・ノーサイドで「きつくて割に合わん仕事やの」と、かつて見下した看護師を職業とする久留美と結ばれようとしている。投資家の自分もマネーゲームをやめ、実業に投資し始めている。

 当初から観ている側には予想外の組み合わせだが、桑原氏はこの2人が結ばれることも最初から考えていたはず。だから虚業に走っていたころの悠人には毒づかせた。

 めぐみはばんばのことを考え、やがては社長を降り、後任は結城章(葵揚・27)にするつもりだ。やはり計算どおりに違いない。当初の章は夜遊びが過ぎて仕事中にあくびをしていたり、作ったネジをぶちまけて、めぐみと一緒に拾ったり。ダメな若者だった。

 けれど、舞にやさしく、一緒に紙飛行機づくりをしたり、一時的に他社に移っていた時期もIWAKURAのピンチを救うために金型づくりを引き受けてくれたり。

 岩倉家とIWAKURAを親身になって考えてくれて、笠やん譲りの技術力を誇るのは章しかいない。めぐみが舞と悠人に自由を与えるのであるなら、後継者は章以外にいない。桑原氏は観る側にもそう伝えたかったから、章の人柄と成長を厚く描いたのだろう。

 これまで偉人伝も多かった朝ドラでありながら、「舞いあがれ!」はスーパーウーマンもスーパーマンも登場せず、町工場街が舞台だった。良かったのではないか。

 日本には現在400万以上の企業が存在するものの、その中で中小企業は全体の約99.7%なのだから。町工場が舞台になったからこそ、リーマンショックによる痛みも生々しく描けた。

 そのリーマンショックの描写が「暗い」という声もあったものの、朝ドラは現代史の記録という性格も持ち、これまでも戦争や東日本大震災を振り返ってきたから、間違ってはいなかっただろう。明るいだけのドラマなら数限りなくある。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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