72年ぶり“除名”処分でも「第二、第三のガーシー議員」は防げない 政治家の信頼失墜が招くさらなる悪夢

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さすらう有権者たち

 一方、今の政治家や政党への信頼度は極めて低い。言論NPOが2019年に公表した調査では、政治家を「とても信頼している」「ある程度信頼している」と答えたのは、わずか20.1%に過ぎない。既存の政治家や政党を信用できない「砂粒化」した個人が、自分が信じられるものを探してさすらった結果、一部の人々が暴露系ユーチューバーのガーシー氏にシンパシーを感じたのではないか。

 参院選前、ガーシー議員が運営していたYouTube番組「ガーシーch」の登録者数は、120万人を超えていた。これは他の候補者の追随を許さない。政見放送ではイニシャルトークで新たな情報があることを匂わせ、当選した暁には実名で暴露することを公約として掲げた。そして当選を果たすのだが、投票用紙に「ガーシー」と書いた有権者は28万7714人。これは有権者数1億500万人あまりの、わずか0.27%に過ぎない。

 ガーシー議員の誕生は、この「砂粒化」した社会でSNSやYouTubeなどを駆使し、インフルエンサーとして一定数のコアな支持者を獲得すれば、国会議員になれることを示した。これはガーシー議員を除名しても変わることはない。いや、社会の分散は一種の自然現象として不可逆的に進み、こうした状況が加速する可能性もある。ルールや制度を変えていかない限り、日本政治はこの状況に対応できなくなるだろう。

全国比例が生んだ「ガーシー議員」

 では、何を改革していけばいいのか。第一に挙げられるのは、ガーシー議員を生み出したのが、今の特徴的な参議院の選挙制度にあるということだ。仮にガーシー議員が衆院選に出馬したとしても、小選挙区では泡沫候補に過ぎないだろうし、全国11ブロックに分かれている比例代表でNHK党(現政治家女子48党)が議席を獲得するのは難しいと見られる。しかし、参議院は比例代表が全国1ブロックなので、有権者の1%にはるかに満たない支持で議席を得ることも可能だということだ。

 参院選の全国比例は、現在全国で32もある1人区で死票が増えることを防ぎ、少数の意見を汲むために取り入れられている制度だ。それが一部のコアなファンを抱えた立候補者の当選を可能にしている。政治がマイノリティーの意見にも耳を傾けることは重要だ。ただ、今回のガーシー議員の除名を機に、今の全国比例の制度が国民の代表を選ぶシステムとして相応しいのか、検討すべきタイミングだと考える。政治家女子48党の立花前党首は記者会見で、「ガーシー議員が除名になっても2年後(の参院選に)立候補してもらう」と、次期参院選に再出馬させる方針を示している。

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