「馬鹿にしないでよ。私は全部知っているんだから…」妻が激怒しても、マリアさんとの関係は“不倫ではない”という40歳夫の身勝手な考え方

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妻の発言で感じた後ろめたさ

 彼はあるとき、妻に「マリアって誰?」と単刀直入に声をかけられて驚きのあまり、飲んでいたコーヒーでむせてしまった。なぜその名前をと尋ねると、妻は「あなたが寝言で言ってたのよ、マリア、マリアって。浮気でもしてるんじゃないの?」と笑った。

「僕も慌てて笑いながら、マリアは恩義のあるママの店で働いている子だということだけ話しました。ごく普通のスナックだよとも言っておいた。妻も『なあんだ、そういうことなの。でも大変ね、飲食店も』と世間話に転じてくれたので助かりました」

 宣之さんには、どこか後ろめたさがあったのだろうか。そう聞くと、しばらく考え込んでから、「あったのかもしれません」と彼はつぶやいた。恋愛したいとか関係をもちたいとか、そういうことではなく、彼女のことが気になってたまらないという感じだったらしい。戸籍上は男性だとわかっていても、ふたりのやりとりの中で信頼だけではない感情が行き交っていたのだろう。恋心と一口に言っても、人情や人間愛に近いものから激しい情欲まで、多彩なグラデーションがあるのではないだろうか。

「僕自身は同性に対してそういう気持ちをもったことがないから、自分が恋をしているとは思っていなかった。でも妻にマリアのことを聞かれたとき、自分でもびっくりするくらい動揺したんです。それで以前よりマリアのことを意識するようになってしまった」

 マリアさんと食事をしての帰り道、彼女が「いつもお世話になっているからお礼がしたい」と言い出した。そんなことは気にしなくていいと言ったが、自分の気持ちがすまないという。うちに来て、おいしいコーヒーがあるの。宣之さん、コーヒー好きでしょと言われ、彼女の住まいを見たいという好奇心にもかられて行ってしまった。

「そこで少し特別な関係になったんです……キスもしました。やはり僕はマリアのことが好きなんだと実感した。ただ、女性に対する気持ちとはどこかが違っていました。うまく説明できないけど」

 これだけは妻には言えない。彼はそう思ったという。

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