中3の村上宗隆を目覚めさせた先輩・吉本亮の助言とは？　長距離打者同士にしか分からないメッセージが（小林信也）

「筒の中に打ち返せ」

　異次元の当たりを飛ばす直前、村上は亮からある助言をもらっている。吉本が教えてくれた。

「よく聞こえなかったのですが、『筒の中に打ち返せ』とか、そんな言葉が聞こえました。そうしたら」

　長距離打者同士にしかわからない会話かもしれない。その直後に驚くべき打球が飛んだのだ。亮の助言で、村上の飛距離が一気に伸びた。その出来事は、村上に大きな喜びと目覚めを与えた可能性はある。

　55号から56号までの生みの苦しみは村上にさまざまな戒めと発見をもたらしただろう。そこから何かをつかみ、大きな糧になっていればさらに打棒はさえるだろう。そして村上にひらめきを与えた吉本亮は今季からソフトバンクの1軍打撃コーチに就任した。亮の指導の成果も楽しみだ。

小林信也（こばやし・のぶや）
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない！』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2023年3月9日号掲載

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