松本零士さんが「鉄道」に残した功績をたどる 「銀河鉄道999」のDNAは日本各地に

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一見、縁がなさそうな地でも「コラボ」

 鉄道と松本作品の初コラボは、1979年に国鉄で企画列車を運行したときで、このときに走った企画列車は「劇場版 銀河鉄道999」のプロモーションも兼ねていたから、その後に運行を開始する鉄道事業者とのタイアップとは意味合いは少し異なる。

 その後、長い空白期間を経て1997年にJR東日本が999の企画列車を運行。以降、各地の鉄道事業者は松本さんのラッピングトレインを相次いで登場させていった。

 代表作『銀河鉄道999』は、鉄道がストーリー上で重要な役割を果たしている。各地の鉄道事業者が『銀河鉄道999』の人気にあやかって、集客のためにタイアップ企画を打ち出すことは自然な成り行きだろう。

 松本さんと鉄道事業者のコラボは、ラッピングトレインの運行だけにとどまらない。小倉駅のように、駅構内もしくは駅前広場などに松本作品に登場するキャラクター像が設置されることは珍しくない。実際、小倉駅は駅構内のみならず北口のペデストリアンデッキに『銀河鉄道999』に登場するメーテル像などが設置されている。

 そのほか、多くの駅で『銀河鉄道999』の楽曲が発車メロディや接近メロディといった駅メロで使用されている。『銀河鉄道999』の楽曲を使用した嚆矢 は、JR西日本だ。

「JR西日本は山陽新幹線の開業40周年となる2016年から、タケカワユキヒデさんがメインボーカルを務めるゴダイゴの楽曲『銀河鉄道999』を新神戸駅・岡山駅・広島駅・小倉駅・博多駅の5駅で発車メロディとして使用しています」と説明するのは、JR西日本山陽新幹線統括本部広報担当だ。

 松本さんと縁の深い小倉駅に、『銀河鉄道999』の楽曲が使用されるのは誰もが納得できるだろう。同じ福岡県に所在する博多駅もギリギリ理解できるが、なぜ縁のない新神戸駅・岡山駅・広島駅にも導入されたのか?

「導入した5駅は、山陽新幹線の全列車が停車する主要駅です。乗降客数も多いことから、発車メロディとして導入することになりました」(JR西日本山陽新幹線統括本部広報担当)

 JR西日本の回答は説明になっていないような気もするが、それだけ幅広く『銀河鉄道999』が愛されていると解釈できる。

西武鉄道と松本さん

 JR西日本のほかにも、松本さんと関係がないように思える鉄道会社とのコラボは少なくない。群馬県を走る上信電鉄や三重県を走る伊賀鉄道などでも松本さんとのコラボ列車が走っている。逆に、松本さんと縁が深い北九州モノレールや西武鉄道とのコラボ開始は割と遅かった。

 後発となった西武だが、もともと西武鉄道池袋線の大泉学園駅の近隣では日本初のカラー長編アニメ映画『白蛇伝』や国産初の連続長編テレビアニメ『鉄腕アトム』が制作されている。大泉学園駅は練馬区に所在し、そうした背景から練馬区は日本のアニメ発祥の地と喧伝している。

 現在も練馬区内には90社を超えるアニメ制作の関連会社があり、練馬区はアニメ産業の振興に力を入れている。練馬区はアニメ制作会社だけではなく、地元の商店街や住民などとも連携。官民一体となってアニメの街として情報発信するとともに、イベントを定期的に実施してきた。

 西武鉄道は練馬区の取り組みに協力した格好になるが、こうした経緯もあって松本さんと西武の関係は濃くなっていく。

「西武鉄道では、2008年に『銀河鉄道999』の車掌が大泉学園駅の名誉駅長に就任し、大泉学園駅の構内に記念オブジェが設置されました。そして、作者の松本零士さんも一日駅長に就任しています」と説明するのは、西武鉄道広報部の担当者だ

 松本さんが一日駅長を務めた翌年には、発車メロディがゴダイゴの「銀河鉄道999」へと切り替わり、タケカワユキヒデさんが一日駅長を務めた。そして松本さんが手がけた『銀河鉄道999』大壁画が駅北口に完成。その除幕式も催行されている。

 また、西武鉄道でも2009年5月から『銀河鉄道999』のラッピング車両が運行を開始している。ラッピング車両は2014年12月に運行を終了するが、2016年10月から2代目となるラッピング車両が登場。2代目のラッピング車両は、2019年3月まで走り続けた。

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