中国のスパイ気球を日本は撃墜するべきか なぜアメリカは1発で仕留められなかった?

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「現場の自衛官に責任を負わせてはいけない」

 もし、アメリカに続けて日本が撃墜すれば……、

「中国は面子丸つぶれで屈辱的な状況になります。すると、在中国の日本企業に理由をつけて経済的な制裁を科するなどの嫌がらせをしてくる可能性は大いにあり得ます」(同)

 さる経済ジャーナリストも同様に指摘する。

「日本は中国に輸入という面で大きく依存していますので、輸出規制などの措置を取られると日本経済への影響は大きくなります。例えば、2010年には尖閣諸島問題で中国がレアアースの日本向けの輸出を制限したことがありました」

 片や石破氏は自衛隊に“丸投げ”してしまうことを懸念していて、

「一番よくないのは、自衛隊が能力的に撃墜できるかわからないのに命令を下すことです。自衛隊法の改正も含めて、能力的、法律的、外交的に撃墜は可能なのか、国会で議論すべきでしょう。現場の自衛官に判断させる、責任を負わせるということを政治家はやっちゃいかんのですよ」

 かといって、気球を放置しておけば、好き放題にスパイ活動が行われることになる。

 先の潮氏によれば、従来の有人戦闘機への対処を参考に、実際の撃墜には以下のようなオペレーションが考えられるという。

5分以内に2機で出撃

 2023年×月×日×時×分、航空自衛隊基地のレーダーサイトで国籍不明の戦闘機ないし、気球らしきものが確認された。このまま直進すると、日本の領空を侵犯する恐れがあると判断され、待機している航空自衛官にスクランブル発進の指示が下される。すると指示から5分以内に2機で出撃することになる。

 出撃後、2機は対象を目視できる距離まで接近。その距離わずか1キロ以内。ロシア機ならロシア語、中国機であれば中国語で、まずは無線で通告する。

「日本領空に近づいている。直ちに進路を変えなさい」

 応じない場合、通告が警告に代わり、無線で退去または着陸命令を出す。それにも従わなければ、機銃による警告射撃。さらに「正当防衛」などの要件を満たせば、ミサイルによる武器使用を行うことになる。

「相手が気球だとして、目視で人がいないと判断できても、無線での通告は行うのではないでしょうか。後で問題になった時を想定し、手順に落ち度がないことを主張できるようにしておくはずです。ただ、気球の中が見えるわけではないので、厳密に『無人』と判断できるかは難しいところです。また、他国籍であると断定するのも容易ではありません」(潮氏)

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