中国のスパイ気球を日本は撃墜するべきか なぜアメリカは1発で仕留められなかった?

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気球撃墜の難易度

 元防衛大臣の石破茂衆院議員は、

「報道が正しいとすれば、アメリカは困難なオペレーションを行っています」

 と、こう指摘する。

「あの高度まで上がってミッションを遂行することは簡単ではありません。自衛隊のF-15があんな高いところでミッションを行ったことはないでしょう。そもそも、高高度偵察機も日本は持っていません。“気球くらい落とせるだろう”と簡単に言える話ではないと思います」

 先の織田氏は、

「私が最も高く飛んだのは5万5千フィート(約1万6800メートル)で、6万フィート(約1万8300メートル)はかなりの高高度です。そのくらいの高度だとF-22でも飛行機に余剰推力が少なくなり、加速もままならないアップアップの状態になります。その中で20ミリの機関砲で照準を合わせるのは非常に難しい。簡単なのは、ミサイルで撃ち落とすことです。ミサイルを使うとその破片が自由落下し、高度によれば数十キロの範囲に落ちてくる。そこで、ミサイルは人のいない海上で使用することになります」

「熱源を捕捉して追尾」

 ただし、

「米軍も気球を撃ち落とす際に1発目を外して、2発目で成功しています」

 とは元航空自衛官で軍事ジャーナリストの潮匡人氏。

「撃墜に使用したF-22には『AIM-9X』という最新式のミサイルが搭載されていました。このミサイルには『発射後ロックオン』という機能があり、発射されたミサイルが自動的に敵を認識して追尾することが可能です。日本も同性能のミサイルを保有しています」

 アメリカが気球を1発で仕留められなかった理由についてはこう解説する。

「このミサイルは対象物の熱源を捕捉して追尾する『赤外線ホーミング』タイプです。対象物が戦闘機の場合、エンジン部分の熱を探知しますが、気球だったために熱源を探知しにくかったのかもしれません。今回は気球が雲の上を飛んでいたために、太陽の光で熱を帯びており、捕捉できたということのようです」(同)

 日本の場合、中国による報復を受けることも考えられる。産経新聞・元北京特派員の矢板明夫氏が言う。

「中国が気球を飛ばすのは、アメリカが中国に対し、半導体の輸出規制を行っていることで、衛星の開発が進んでいないという側面があります。衛星による諜報活動が停滞しかねない事態になっているのです」

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