長渕剛の「土地を外国人に売らないで」発言の背景にある「北海道の中国化」

国際 中国

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 歌手の長渕剛のライブでの発言が話題になっている。その発言が聞けるのは、本人のYouTubeチャンネルで9月27日にアップされた動画。札幌芸術劇場でのライブをレポートしたものである。

 このライブで、長渕は北海道の素晴らしさを語ったうえで聴衆に向かってこう強く訴えかけている。

「北海道という街は、その昔開拓民たちが一生懸命に開拓した街だ。お願いだからこの自然に満ち満ちたこの土地を、外国人に売らないでほしい」

 ネット上では、このメッセージに共感する人が多くいる一方で、「ヘイト」「ネトウヨ」といった言葉で批判する人も見られる。外国人の権利関連の話になると、よく見られる構図である。

 もちろん長渕は外国人排斥を訴えたかったわけではない。念頭にあったのは、北海道が外資によって買い漁られていることへの危機感だと見られる。

 日本政府は外国人が土地を買うことに極めて寛容な政策を取ってきたため、国内各地で危機管理上の問題が想定されるような土地買収が行われている。自然豊かで広大な北海道もそのターゲットの一つだ。

 この問題に長年警鐘を鳴らし続けてきた姫路大学特任教授の平野秀樹氏は著書『日本はすでに侵略されている』で、日本中で土地の所有者が不明となり、北海道ではとりわけ「中国化」が進行していると指摘している。同書から北海道がどのように「侵略」の危機にさらされているかを示したところを抜粋・引用してみよう。

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 もう北海道の外国化=不明化は、誰にも止められません。

 2018年1月、札幌市内のホテルで盛大な昼食会が催されました。

 出席したのは高橋はるみ北海道知事と許認可に関わる政府官僚、ニセコ花園リゾートの事実上のオーナーで、香港の不動産企業PCPD創業者リチャード・リー(李沢楷)氏、そしてバードライフ・インターナショナルの高円宮久子名誉総裁などでした。宮中晩さん会のような優雅な雰囲気の中、公益法人などへ多額の寄付をすることがあるリー氏を囲んでの昼食会は、政府と自治体に対して花園リゾートにお墨付きを与える効果もあったことでしょう。

 当リゾートには2021年までに大規模な増設計画があり、2019年10月に開催予定のG20観光大臣サミットの話題などで盛り上がったようです。ちなみに観光大臣サミットの会場はこの会合の数カ月後、当リゾートに決定しました。香港資本が所有する日本国内の土地・建物でサミットが開催されるのも異例のことです。

 それもそのはず、過去10年以上にわたる当リゾートの事業の積み上げぶりは見事なもので、土地買収に加え、スキー場とホテルの買収、さらに大型コンドミニアムの建設と、着々と業容を拡大してきました。資金調達力はもとより、許認可を得るための政官界でのロビー活動、広報宣伝活動など、その実行力には脱帽します。

原発、自衛隊の近所に

 もし開発が計画通りに進めば、HANAZONO・ニセコワイスエリアは今後数年以内に、四季を通じたワールドクラスのリゾート地として完成することになります。尾根同士を大胆につないでいくゴンドラや中継地となる立派な駅舎からは遠く日本海を、また30キロ圏内にある泊原発をも一望のもとに収められます。すぐ近くで行われる自衛隊の雪中訓練も目にすることができるでしょう。(略)

夕張を買う中国資本

 自治体が丸ごと存続できなくなり、主要な観光資源が外資に買収されてしまったというのも、北海道発です。2007年、財政破綻した北海道夕張市は、日本で初めて消滅廃止含みの財政再建団体に指定されました。先行き不明では叩き売りはやむを得ません。

 炭鉱町として知られた1960年、12万人近くあった人口は半世紀のあいだに現在8千人弱にまで落ち込んでいます。市職員給与は4割カットされ、全国最低レベルの行政サービスに住民も有能な市役所職員もこぞって逃げ出し、65歳以上の高齢化率は今や51%。財政破綻に加えて人材不足が深刻で、離島になぞらえれば無人島化へ一直線という状況です。

 こうなれば売れるものは何でも売ろうというわけで、2017年、市は虎の子の市の所有資産である四つのリゾート施設を公売にかけました。二つの大型ホテル、スキー場、合宿施設です。落札価格は2億2千万円。

 救世主のように現れたのは元大リアルエステート(役員は中国人1名)でした。数カ月後、同社は夕張炭鉱の繁栄を象徴する夕張鹿鳴館も別法人から買収し、広大な敷地8万5千平方メートルは市がタダで貸すことになりました。

 これで中国資本が夕張市の観光資源のほぼ全てを手にしたわけですが、落札にはそれなりの理由がありました。施設改修と広告費に約100億円を投資して、ニセコのような大リゾート地にするというのです。しかし資本金わずか100万円という元大リアルエステートには、リゾート運営の実績らしいものはほとんどありません。長野県山ノ内町と北海道赤井川村でホテルやゴルフクラブを買収し、中国人へ転売した実績があるぐらいです。

 夕張市の物件については、最小限のインフラ補修を経て、傘下の元大夕張リゾートが訪日客への対応を強化するため、多数の外国人を採用しました。2017年の同市の外国人増加率は77%でした。そして、買収から2年後の2019年2月、元大リアルエステートはこの物件を香港系ファンドに15億円で転売しました。

 今後、夕張の中心地にあるこれらの主要リゾート資産が、糸の切れた凧(たこ)のように所有者不明化し、数千万円以上とみられる固定資産税が徴収不能になってしまわぬことを祈るばかりです。

 消滅がちらつく脆弱な自治体にたいして、主な経済資産の占有を終えた外国資本はこれからどう振る舞うのでしょうか。(略)

 自治体の過疎、多額の負債と所有資産の売却、そして外国化──先行する夕張モデルは、そういった意味で象徴的です。自治体ごとに変化のスピードは違うでしょうが、夕張市に続いていくことが見込まれます。北海道という広大な地区(国土ブロック)もまた、結局はそうなる可能性が高いと筆者は見ています。

第二の開拓時代の幕開け?

 それでもこの十数年、北海道は経済的には色めき立っています。

 98年の江沢民、2008年の胡錦濤、2018年の李克強首相と、きっちり10年刻みの日本訪問に国内主要メディアは歓迎一色でしたが、そこには中国なりのメッセージを読みとることができます。

 特に2018年、冷え込んでいた日中関係をよそに、中国ナンバー2が北海道の地を踏んだという事実は重いもので、かの国の北海道接近はより確実となりました。「経済進出と世論工作の両面で、北海道に沖縄と同格の重みをもたせている」(在北京の共産党関係者)ということが証明されたかっこうです。

 最近は十勝の開拓農家の暮らしを描くNHKの朝ドラ「なつぞら」が人気ですが、現実としては、明治期の開拓・殖民政策からほぼ150年を経て、異国の手による「第二の開拓時代」がはじまっているようにも見えます。すでに北海道内の土地売却については、周囲の目をはばかる者がいなくなりました。

 現在、道内で外資によって買収された林地は2725ヘクタール(2019年、道庁調べ)。ただし、これらは申告ベースなので実際はケタが一つ違うはずです。

 農地の買収も方々で進んでいます。中国とかかわりの深い日本法人K社(本社・兵庫県)の子会社E社(北海道むかわ町)が400ヘクタールを買収(2012年当時は1170ヘクタールを所有)していますが、解(げ)せないことに、当法人は用途不明の広大な土地を複数の地点に寝かせたままにしたり、個人に転売したりしています。「いったいどこから、何の目的で資金が調達されているのか」「国家的なセクターからの調達なのでは……」と地元のJC理事らは訝しがります。(略)

 李克強首相の訪問先になった苫小牧の強みは、グローバル対応のアクセスです。国際空港にも近く、カジノのIR(統合型リゾート)の有力候補地で、海外から大規模な土地買収とホテル建設計画がもち込まれています。また教育分野では2018年、苫小牧駒沢大学が中国資本に無償譲渡されたほか、1万人の別荘地構想が現実味を帯びてきています。日中のインターナショナルスクール構想も浮上しています。

 釧路も負けてはいません。一帯一路構想では、南のシンガポール・北の釧路と、アジアの玄関口に位置付けられ、国交省も国際バルク戦略港湾(2011年指定)、観光立国ショーケース(2016年指定)など相次いでお墨付きを与えています。

 日本で唯一、海底炭鉱の現場をもつ釧路コールマインは、20年間で延べ2千人以上の中国人研修生に国費で掘削技術を伝授しましたし、それは国境域で進む大陸棚の掘削調査にも活用されている可能性があります。

 釧路の隣にある白糠町は日中交流に特に熱心で、町内の日中物産白糠工場(代表は中国人)には1億円以上の助成金を注ぎ込むなど、首長が率先垂範で肩入れを続けています。教育面では、道立白糠高校で2014年度から教育カリキュラムに中国語を導入し、2016年からは高2・高3で基礎中国語と応用中国語を指定しています。釧路市へは、中国政府系の文化機関・孔子学院の受け入れ要請が中国大使館筋からあったもようです。

 ここ数年、釧路・白糠周辺一帯には、中国系企業のほか、中国とかかわりがある企業によるソーラー発電やバイオマス発電が集積しはじめました。前述のK社が関連する法人は2019年、白糠町有地16ヘクタールを取得しています。道東地区の広大な土地と豊富な水資源、木材資源、電力を組み合わせていくと、当地は将来、植物工場など一大食糧基地に発展する可能性もあると期待されています。

中国人のための丸ごとリゾート基地化

 苫小牧と釧路のほぼ中間地点にあるサホロ(新得町)、トマム(占冠(しむかっぷ)村)の両リゾートエリアもホットです。

 数年前までは半ばゴーストタウン化していましたが、2015年、サホロを経営するクラブメッド(仏)が中国の復星集団によって買収され、トマムも同じく2015年、その復星集団傘下の上海豫園旅游商城が買収しました。以来、順調な投資が続き、ホテルの改修と新築に加え、従業員用とされる住宅施設への積極的な投資も目立ちます。周辺集落が過疎化、無人化していく姿とは対照的です。

 今では、オーナー、経営者、従業員、そして大量のゲストと、関係者の国外化が進み、中国資本による、中国人が働く、中国人のためのリゾートという見方もできそうです。JRトマム駅はさながら中国人専用駅という状況で、釧路-千歳-札幌を走るJR特急「スーパーおおぞら」の車内放送は中国語と日本語のみです。英語と韓国語はありません。

 こうした活況に応えるべく、日本政府もバックアップしています。2019年、道東自動車道トマム-十勝清水間を4車線化することを決めました。

 国土買収が進むこうしたエリアでは外国人従業員が増え、ガバナンスへの波及も無視できなくなっています。トマム地区の外国人比率は、50.5%(2019年7月末)。とうとう半数を超えました。地元の女性と結婚するなど、何組かのカップルも誕生しています。

 外国人参政権こそまだですが、日本に住んで、その市町村に住民票があれば、外国人でも事実上、政治に参加できるようになりました。「住民投票条例」と「自治基本条例」のおかげです。

 あらかじめ投票方法や有資格者を条例で定め、請求要件さえ満たせばいつでも、どんな些細なことでも実施できるというもので、市町村単位で独自に制定されています。外国人にも投票権が保証されるケースがあり、地方行政に直接参加できるわけです。

 北海道内ですでにこうした条例を定めている自治体は、芦別市、北広島市、増毛(ましけ)町、稚内市、安平(あびら)町、むかわ町、猿払(さるふつ)村、美幌町、遠軽(えんがる)町の9自治体で、2015年以降は、新たに北見市、苫小牧市、占冠村が続きました。この2市1村は、いずれも外国人に対して、居住期間など条件付きで投票権を認めています。

 これら12の自治体はある意味、地雷を抱えているのかもしれません。条例を根拠に、多数派の居住者(外国人)が首長のリコールを成立させることもできるとなると地方自治が将来、多数派に牛耳られることもあり得ます。そうした懸念を道議会に忠告したのがアメリカ総領事館だったというところに、行政機構の弛緩がうかがえます。

 やはり、人口という数の力は厳然とした力であり、武力にも匹敵します。

 かつて「北海道人口1千万人戦略」という構想が話題になったことがありました。国交省と道開発局が主催する講演会(2005年)において発表されたもので、北海道チャイナワークの張相律代表が提唱しました。

 当時は荒唐無稽なプランという受け止め方でしたが、昨今の北海道を見ていると、単なる個人の思いつきレベルではなかったことがわかってきます。「1千万人のうち200万人が中国移民」というのがポイントでした。

 膨張する国家が目指す一本の筋、それを実現するための工程、具体的プランを指導層と研究者らが共有し、それにしたがって人、モノ、カネが大規模に動いていく。さまざまな現象をつなぎ合わせてみると、そんな構図が浮かび上がります。

 本書が追う不明化ニッポンという現象も、隣の大国からすると、実現すべき将来構想に近づけていくためのプロセスの一つで、暫定的な現象なのかもしれません。

 そういった中長期の進出プランを仮に名付けるなら、北海道ブロック計画、沖縄南西諸島計画、そして首都圏計画──。地区ごとにそのような進出計画が、明確なタイムテーブルとともに用意されていることが推察されます。

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 さすがに余りにも脇が甘いということで、昨年、重要土地等調査・規制法が定められ、先月から施行された。これによって、自衛隊や海上保安庁、原子力発電所といった安全保障上の重要施設の周辺の土地取引に関しては、一定の規制が可能になった。

 しかしこの法律の成立に関しても、一部新聞や野党は私権の制限にあたるうんぬんと言って反対していた。

 あたかも、できるだけ日本を無防備にしておきたいという意図でもあるかのようだった。

 長渕は、かつて自衛隊の激励ライブも行い、防衛省から特別感謝状を贈呈されたこともある。また全国をツアーで回る中でいろいろと実際に見聞きしたこともあるのだろう。

 それだけに黙っていられない、という気持ちがあり、ライブ中の発言になったというところだろうか。

デイリー新潮編集部