ロシアへの制裁は「闇の政府」の仕業 元大臣が驚きの発言

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 かつて政権を担った民主党関係者のツイートで、注目度が高いのは鳩山由紀夫元総理のものだろう。

 鳩山氏はどういうわけか、中国やロシアなど日本にとっては脅威と見られる国に対して強い友愛精神を発揮して、その度に物議を醸している。

 この民主党の遺伝子を受け継いでいる一人が立憲民主党の原口一博代議士かもしれない。民主党政権時代には総務大臣を務めた人物である。

 原口氏は2月19日、次のようにツイートした。

「DSの言われるままにロシア制裁を続けてきた日本の岸田政権。その愚かさにより第二次世界大戦敗戦後の日本が築き上げてきた外交的成果も国民の安全と利益も大きく傷つけていた事が判明するだろう。

 アメリカは変われるし生き残れる。しかし日本は、どうか。全く別の政権を作らなければならない。」

 このツイートに対しては、「陰謀論なのでは」といった反応が複数寄せられている。というのも、冒頭にある「DS」とはDeep Stateの略で、「闇の政府」などと訳されることもある言葉。

 ネット上の陰謀論について論じた『デマ・陰謀論・カルト―スマホ教という宗教―』(物江潤・著)では次のように解説されている。

「DSとはDeep State(闇の政府)のことで、要するに表に見えているアメリカ政府とは別に、より強大な政府が存在しているということです。

 アメリカ政府だけでなく、DSは実に様々な世界を牛耳っているとされます。政財界の有力者、マスコミ、ハリウッド等、権力を持っていると思しき組織や人物は、あっという間にDS扱いされることもあります。ネットユーザーたちがQ(注:ここでは極秘情報を発信する謎の人物)やDSについて様々な解釈・推測を繰り広げるため、野放図的にどんどん追加されていくわけです。

 また、ドナルド・トランプ自身が、敵対する相手や組織に対し、DSの仲間や一部だと非難するように、DSという言葉は一種のレッテルとしても機能しています。

 反論が難しい批判や追及がきても相手はDSだとすることで、少なくとも同志たちの納得が得られるわけです。DSは巨大な力を持つ卑劣な組織なので、いくら本当らしい証拠があったとしても、どうせ捏造であるとか、マスメディアとグルになっていると言いさえすれば、ドナルド・トランプは正義であり続けます。

 一方、DSの存在を信じている人々からすれば、陰謀論という言葉がまさしくDSの悪事に蓋(ふた)をするレッテルであり、真実を暴こうとする自分たちへの攻撃に他なりません。大量の証拠をもとにどれほど説得しても、陰謀論のレッテルを貼られ次第、聞く価値のない戯言(たわごと)として扱われることに、彼らは怒りを覚えています。

 そんなDSに属する悪者たちは、小児性愛者・悪魔崇拝・人身売買といった行為に関与していると説明されることが多く、完全なる悪として抽象化・先鋭化しています。彼らはグローバリストでもあり、新世界秩序(NWO)の構築に向け、世界の裏で暗躍してきたとされます。(略)

 このような構図はエンターテインメントの世界ではおなじみです。ショッカー対仮面ライダー、スペクター対007等々。多くの常識的な現代人は、表に出ていない巨大な闇の組織なんてものを信じていません」

 こうしたことから、多くの政治家はあまりDSなどという言葉を不用意には使わない。

 陰謀論者だと思われるからだ。

 たしかにトランプ大統領やその周辺はDSの存在を強く主張していたし、今もしている。トランプ氏が再選に失敗したのもDSの仕業だと彼らは見ている。またかなりの割合のアメリカ人がその存在を信じているという。

 原口氏自身は、「陰謀論では」といった批判に対して、次のように答えている。

「このDSの使い方については、過去何度も説明して断っています。

 かつて軍産複合体と言われたものに金融、情報などグローバリズム大企業も含めたかたちで形成される「いわゆるDS」と。」(2月20日)

 つまり、「闇の政府」のことではなく、軍事産業を含めたアメリカのグローバル企業と政治とが結びついたかたまりのようなものを指しているということだろうか。原口氏は「ネオコン」と似たような概念だと考えていると見られる。

 問題は、定義も明確ではないままに「DSのせい」と言えば何でも便利に説明できてしまう点だろう。原口氏によれば、軍産複合体に金融や情報関係の大企業を含めたかたちで「形成される」とのことだが、どこでどのように「形成」されて、どのように意思が決定され、そして政府に働きかけているのかといった肝心なところは不明なのである。

 原口氏が考えるところのDSは冒頭のツイートから見ると、単にバイデン政権のことを指しているようにも読めてしまうのだが、その場合、「闇の政府」ではなくて単なるアメリカ政府である。

 もちろんどの国にも支配層は存在しており、また財閥や学閥のようなものも存在している。アメリカでいえば軍産複合体の影響力の大きさはかねてよりよく伝えられてきた。

 しかし、ロシアへの制裁は岸田総理が誰かに操られてやっているわけではなく、G7の一致した方向性のはずなのだが、イギリスやフランス、ドイツもDSの支配下にあるという世界観なのだろうか。

 さらにいえば、原口氏の所属する立憲民主党は、ロシアに対する「(国連の)厳格な制裁を全面的に支持」(同党国会レポート2022年)という立場のはずなのだが……。ここにもDSの力が及んでいるとすれば、その影響力は計り知れないということか。

デイリー新潮編集部

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