不倫相手との「墓」を買った50歳夫に妻が激昂 「あんたの工場なんか簡単に潰せる」の決定的修羅場

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「夫婦別墓」という考え方がある。全国の60~70代男女600名に行った「配偶者と同じお墓に入りたいか」というアンケートでは、全体の13.2%が「できれば入りたくない」「入りたくない」と回答している(2015年、第一生命経済研究所 ライフデザイン研究本部実施の調査より)。

 性別でみると、別墓を求める男性の割合は6.7%であるのに対し、女性は19.5%とかなりの開きがある。現在ではさらにその意識は広がり、妻の3割以上が、「夫と同じ墓に入りたくない」と思っているという見方もある。

 夫のことが嫌い、死んだ後は一緒にいたくないというのがその理由だが、それ以上に多いのが「夫の先祖や義父母と同じ墓は嫌だ」という声だ。お墓じまいなども話題となり、お墓問題は今後、ますます血筋にとらわれないものになっていくのかもしれない。

 男女問題を30年近く取材し『不倫の恋で苦しむ男たち』などの著作があるライターの亀山早苗氏が今回取材したのも、夫婦間での墓をめぐるすれ違いが生んだケース、といえるだろうか……。

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「そもそも僕は墓なんて、まったく興味がない。死んだらわからないのだから、どう処理されてもかまわないと思っていました」

 川相秀一さん(50歳・仮名=以下同)は、昨年、ふたり用、一代限りの墓を購入した。ともに入るのは妻ではない。10年以上つきあっている美香子さん(55歳)だ。墓といっても墓石があるわけではなく、霊園の自然葬。プレートにはふたりの名前が刻まれる予定である。

「でも、それが妻にバレまして。妻は裏切った、どういうつもりなんだと怒っています。そりゃそうですよね。でも、うちの妻、数年前に『私はあなたと一緒のお墓には絶対に入らない』と断言したんですよ。墓はそれぞれ勝手にすればいい、という話になった。なのに僕が墓を買ったら怒るのはちょっと筋が違う」

 秀一さんはどこか薄ら笑いを浮かべながらそう言った。煮ても焼いても食えないヘラヘラタイプなのかもしれないと、私の脳内で黄色信号が点る。

「いわゆる“不倫関係”になるんだと思うけど、僕と美香子の関係は少し複雑なんです。どこから話せばいいかな」

 秀一さんはふっと真顔になって話し始めた。

幼少時から両親の間に冷たい空気が

 秀一さんは関東地方のとある町に住んでいる。父は小さな町工場を経営していた。実直な人柄と丁寧な仕事で、工場は大きくはならなかったが堅実に回っていた。

「僕はひとりっ子なんです。下に妹がいたらしいけど死産だったと。父はもともと寡黙だったけど、それ以来、どこか暗さがつきまとうようになった。母は自分のせいで死産だったと思い込んでいたので、夫婦仲は決してよくなかった。僕が物心ついたころも、両親は仲良くないなと思っていました。同居している父方の祖父母が、母に気を遣っている感じでした。僕も祖父母にはかわいがられて育ったんです」

 言い争いをするわけではないが、両親の間に冷たい空気が流れていた。それを補う形で祖父母が明るく接してくれる。なんとなくおかしいと思いながらも、秀一さんは飼っていた犬と常に行動を共にしていた。

「もともとは番犬代わりだから外で飼っていたんですが、僕は3歳くらいからその犬と一緒に寝ていました。祖父母の過剰な愛情が疎ましいような、でも両親の冷たさが寂しいような、いつも気持ちが不安定だった。そんな僕の気持ちをいちばんわかってくれたのが愛犬のジョンだったんです」

 長生きしたジョンを看取ったのが中学生のころ。最後は秀一さんの腕の中で事切れた。悲しみを吹っ切り、ジョンの写真を筆箱に貼りつけて高校受験に挑んで合格した。高校では中学から夢中になっていたバスケットボール部に入り、部活に生徒会にと活躍した。

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