松坂大輔、西武臨時コーチで若手投手陣に伝えた“投球の神髄”を探る!

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「逆ティー打撃の勧め」

 2日目の2月12日。2021年ドラフトで4球団が競合、即戦力左腕の評判を取った隅田知一郎だが、ルーキーイヤーの2022年は1勝10敗。巻き返しを図るべく、南郷キャンプでは「カットボールのブラッシュアップ」に取り組んでいる。
その隅田が授けられた“金言”は「逆ティー打撃の勧め」だった。

「松坂さんはティーを打ったりして『投げるだけじゃなくて、逆の動きを入れたりしてたよ』ってことをおっしゃっていました。例えですけど、マシンでもネジの緩みとか、誤差があるじゃないですか? 人間って体の使い方で、誤差って、絶対に出ると思うんです」

 カットボールは、左腕の隅田なら、真っすぐの軌道から左打者の外角へ数センチ動くことで、バットの芯を外す球だ。この“小さな変化”こそが重要で、隅田が挙げたのは、ソフトバンク・柳田悠岐との対戦での経験だった。

「やっぱりいいバッター、柳田さん、吉田正尚さん(オリックスレッドソックス)とかもそうでしたけど、ちっちゃな変化にすごい反応してくるので、振って崩してもらうためのボールにしたい。どれだけ真っすぐに近づけるかというのは意識をしてやりたい。松坂さんから、ヒントは頂きました」

 隅田によると、昨季も調子がいいと感じたときほど、カットボールが「曲がり過ぎちゃうことがあった」。逆にあまり調子が出ていないときの方が「意外とカットが良かった、とかはあった」。調子がいいから、体や腕が“動き過ぎ”の状態になってしまい、意図した以上の変化が出てしまうというわけだ。

 そこで、投げる時の動きと逆、隅田なら右打席でのティー打撃を行うことで、体のバランスを調整した方がいいというわけだ。横浜高時代から打撃には定評があった松坂コーチも、現役時代の調整で、左右両打席でのティー打撃を行うシーンがたびたび見られている。

低めへの意識を、心身ともに植え付ける

 こうした「練習法」の具体的なアドバイスは、3日目の13日、ブルペンで180球の熱投を見せた4年目の左腕・浜屋将太にも伝えられた。

 2020年ドラフト2位入団も、昨季は1軍登板がなく、プロ3年で4勝止まりのサウスポーは昨秋から、かつてのスリークオーターより10度ほど左腕を下げ「サイドまではいかないくらい」という新投法に取り組んでいる。

 西武の投手陣には、エースの高橋光成や今井達也ら、右の本格派が多い。それだけに、左腕の変則タイプが加わってくれば、貴重な存在になり得る。180球の投げ込みを行ったブルペンでは、松井稼頭央監督、平石洋介ヘッドコーチがそろって視察。浜屋の成長への期待度は、実に大きいのだ。

 ただ、フォーム固めの真っ最中とあり、力んで左腕が外回りすることで、リリースの瞬間に左手首が上を向いてしまい「球がふけてしまう」というのが浜屋の悩みだという。

 球速が140キロ台の変則左腕にとって、高めに浮くのは命取り。浜屋の左側、右側へと場所を移しながら、その投球をじっと見つめていた松坂コーチは、「高低を使えるようにもう一個分、ボールを低めに」とまずは忠告。その意識を植え付けるために「10球連続で打者のひざから上に行かないように、低めを突く」という練習法を伝えた。

 さらに、先発した試合の後半のイニングを想定し、体を疲れさせた状態で投げてみるために「ウエートトレとランニングをガンガンやって、足が動かないくらいの状態」にした上でブルペンに入ることも一つの案だと、浜屋に勧めたのだという。

 低めへの意識を、それこそ心身ともに植え付けるための、徹底したハードな練習法だ。

「球が浮かないようにという、その意識が足りていませんでした。7割、8割のバランスで投げられるようにしたいです」と浜屋も“松坂練習法”に納得顔だった。

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