アメリカ軍の凄すぎる「気球撃墜大作戦」 炭疽菌を積んで飛ばされたら日本は一巻の終わり

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 2020年6月、宮城県や福島県で「白い球体」が目撃された。当時の防衛相は河野太郎氏(60)。彼は記者会見で「安全保障に影響はない」と述べた。しかし残念なことに、その見解は完全に間違っていた。今、中国の軍事用気球が世界の安全保障を揺るがしている──。

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 国会でも論戦が続いているが、そもそも軍事問題に精通した有権者となると、極めて少ない。気球が軍事利用されているというだけで驚く人もいるだろう。だが関係者にとっては“常識中の常識”だという。軍事ジャーナリストが解説する。

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「気球の軍事利用はアメリカがトップを走り、中国が猛追しています。例えばアメリカ軍は軍需産業と協力し、高高度に係留した気球を使って南部国境からメキシコ湾およびカリブ海に至るまでの麻薬密売ルートを監視していることが明らかになっています。中国は2015年に宇宙戦を担当する戦略支援部隊を新設し、超高高度を飛ぶ気球、飛行船、ドローンの研究をしています」

 2021年9月に開催された第13回中国国際航空宇宙博覧会(広東省珠海市)には、中国の国営軍事産業が偵察用気球を出品した。

「博覧会が開催されたのは宮城県などで気球が目撃されてから、およそ1年3カ月後という時期でした。中国は軍事利用を目的とする気球を、第三国に輸出することも視野に入れて博覧会に出品したのです」(同・軍事ジャーナリスト)

「スパイ衛星」より「スパイ気球」のほうが優れている点として一番に挙げられるのは、コストの安さだ。ロケットで人工衛星を打ち上げるためには、膨大な資金と高い技術力が必要であり、発展途上国には不可能と言っていい。

軍事用気球のメリット

 だが、国家予算の乏しい国でも気球なら飛ばせる。特定の地域を長時間偵察することは人工衛星より得意だ。一方、スパイ衛星に関しては、宇宙空間で攻撃して破壊する兵器の研究も進んでいる。そのため軍事用気球への期待は高まる一方なのだ。

「軍事用気球のメリットは他にもあります。主要なものとして3点を挙げておきましょう。第1点は『目的は気象観測』とか『民間企業が飛ばした』といった言い逃れが容易なことです。2020年6月に日本で発見された気球の場合、アメリカ空軍の三沢基地が近くにありました。2月4日にアメリカ軍が南部サウスカロライナ州の沖合上空で撃墜した気球は、グアムやハワイの米軍基地を監視する目的で飛んでいたと16日付のニューヨーク・タイムズ紙が報じました。状況として“クロ”であることは言うまでもありません」(同・軍事ジャーナリスト)

 どちらの気球もレーダー波やミサイル誘導電波の傍受(エリント)が目的だった可能性がある。とはいえ、現状では「偵察を目的とする軍事用気球だった」という確たる証拠はない。

 アメリカは撃墜した気球を回収し、「民間企業による気象観測用の気球」という中国側の主張がウソだと証明するため、調査を続けている。

 大国のアメリカだからこそ、これほどの手間やコストに耐えられる。発展途上国なら“泣き寝入り”するしかないだろう。日本も無為無策だったため、真相の解明は永遠に不可能だ。

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