中国の高齢者はコロナ政策の失敗に大激怒 今後も“群体制事件”が多発する可能性

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コロナのせいで狂う老後プラン

 中国政府によれば、地方政府が昨年にゼロコロナ政策に投じた金額は少なくとも516億ドルに上っている。あてにしていた土地売却収入が激減しており、医療品の購入補助にまで手が回らなくなっている。

「3年間無料でPCR検査をした代価がこれか」「いつも人民のために奉仕しているというが、誰のために奉仕しているのか」と政府の無能ぶりに非難が集中している。

 高齢化率(全人口に占める65歳以上の割合)が2021年に14%を超えた中国は今や「高齢社会」に突入している。昨年の高齢化率は約15%に上昇し、高齢化のスピードは日本よりはるかに速い。

 日本とは異なり、中国では定年になれば仕事を辞め、孫の面倒を見て好きなことをして暮らすのが一般的だが、新型コロナのせいで穏やかな老後が迎えられなくなっていると言っても過言ではない。

 政治的な影響力が大きい高齢者が各地でデモを起こしている状況を踏まえ、「中国人は今や強権的な政府への恐れを振り払った。望むものを勇敢に表現する人がさらに増えるだろう」と中国ウォッチャーは予測する。

 中国政府が忌み嫌う「群体性事件(集団デモを指す中国式用語)」が多発する可能性が高まっていると言わざるを得ない。

 習近平指導部は2月16日「コロナ政策の転換は決定的勝利だった」と自賛したが、「敬老」の精神が今も根付いている中国で高齢者の不満は高まるばかりだ。政府に対する信頼はますます低下しているのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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